中国との国境1400キロに三重のフェンス…巨大な収容所と化す北朝鮮

北朝鮮・中国修交75年、国境地域丹東ルポ

 中国・遼寧省丹東市で10月3日、鉄条網の間から北朝鮮・平安北道の黄金坪一帯が広く見える道路の区間に入ると、中国公安(警察)の車が1台、大きな音をたてながら追いかけてきた。この車は5分間「追撃戦」を続けた後、フェンスの向こうの北朝鮮の地が遠ざかる場所になると、ようやく視界から消えた。窓の外に見える中朝国境は、中国の二重のフェンスを含めて三重になっていた。中国・北朝鮮双方のカメラが向かい合った状態で監視していた。丹東の消息筋は「北朝鮮側のフェンスを見るとカメラが以前よりもぎっしり設置されているが、昨年下半期から台数を大幅に増やしたものだ。特に黄金坪の死角地帯に集中設置したらしい」と語った。

【写真】鴨緑江沿いでフェンスを設置する作業員

 10月6日に北朝鮮と中国は修好75周年を迎えたが、1400キロに達する朝・中の国境の障壁は類例がないほど高くなり、北朝鮮住民の足をがっちり縛っている。南北の軍事境界線(248キロ)の5倍を超える長さの国境が幾重もの鉄条網、ぎっしり取り付けられた監視カメラとこれに連動したAI(人工知能)監視システムで、これまで以上に固められた。中国を経て東南アジアなど第三国に脱出していた北朝鮮住民らは、今や「巨大な収容所」に閉じ込められることになった。

 実際、2009年の時点で3000人に迫っていた韓国入国脱北者数(統一部〈省に相当〉調べ)は、12年の金正恩(キム・ジョンウン)政権発足後に1000人台へと減り、昨年は196人にまで減少した。今年上半期も105人にとどまる。最近の脱北者は、リ・イルギュ元在キューバ北朝鮮大使館政務参事のような「海外エリート」の比率が高まった。普通の北朝鮮住民には、閉ざされてしまった中朝国境を突破する方法がほとんどない、ということを意味する。丹東の道路の各所には「国境を固めることはすなわち国を固めること(固辺就是固国)」というスローガンが掲げてあった。

 北朝鮮と中国が一斉に国境封鎖の強化に乗り出したのは異例だ。北朝鮮は、核開発による国連制裁の長期化と洪水などの災害に伴う経済難で脱北者が増えるのを防ぐため、国境を固く閉ざしている。中国は、脱北者を北朝鮮に送還する煩わしい仕事を避けて国境の警備を強化するために、脱北者を元から遮断することに力を入れている。特に昨年から、北朝鮮はウクライナと戦争中のロシアとの軍事協力強化などを通して中国とは「距離を置く」ことを本格化させ、中国は国際社会から孤立することを懸念して北朝鮮向けのばらまきを渋るようになり、両国の経済交流が凍り付いて国境障壁がますます高くなった-という指摘がある。

 国境地帯だけの問題ではない。中国では、全域にわたるAI(人工知能)顔面認識カメラ監視網と、鉄道に乗るだけでも2度の電子身分証チェックを行う保安システムにより、脱北者の足場がない。国境を越えても中国で公共交通手段を利用できない。「AIの目」が「身元不詳の人物」として捕捉し、一挙手一投足を監視するようになった。脱北者らがブローカー個人の自動車に乗って中国東北部から東南アジアの国との国境地域まで移動することに成功したとしても、国境を越えるために車から降りた瞬間、追い付いた公安に捕まるケースが多いという。今年9月には遼寧省・吉林省で、脱北者らを狙った公安の集中「街頭取り締まり」も始まったといわれている。

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  • ▲グラフィック=梁仁星(ヤン・インソン)
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