夕食時の雰囲気が一変した韓国の飲食店街【萬物相】

 1990年代初め、就職した大学の同期たちと出会うと、猫もしゃくしも夕食会と夜勤に対する苦痛を吐露した。毎日のように会食し、その後も退勤できずに職場へと戻った。近くの飲食店や居酒屋も、会社員の業務サイクルに合わせ、夜遅くまで営業した。テレビCMでは、夜勤を終え、夜12時まで酒を飲み、退勤する人々のための二日酔い対策ドリンクのコマーシャルが広く出回った。

【グラフィック】韓国会社員 通勤と帰宅に掛かる平均時間

 「こうした習慣以外の夕刻」が存在することを、欧州に出張してみて初めて知った。退勤後、すぐに帰宅して家族たちと夕食を取る彼らの姿は見慣れないものだった。午後6-7時になるとソウルは夕食時としてにぎわいを見せるが、欧州の都市は一部の遊興街を除いて完全に閉店してしまう。韓国での習慣をそのままに遅く出掛けてしまった時は、営業中のレストランを見付けることができず、夕食を取ることができないこともあった。

 いつのまにか韓国人の生活もそのように変わってきている。あるカード会社がソウル市光化門、江南、汝矣島、九老、京畿道板橋など5地域で勤務する会社員の交通カード利用時間帯を分析したところ、退勤時間が5年前に比べて平均で19分も早まっていたことが分かった。午後6-7時台が43%と依然として最も多かったが、7時以降の退勤が5年前に比べて減り、午後5-6時の退勤が13%から23%へと大幅に増えた。退勤後、どこでカードを使っているかも調査された。飲食店や居酒屋へのアクセスが減り、これに代わってジムでの使用が増えた。夕食時の過ごし方が、先進国型へと変化してきているというわけだ。

 ソウル市光化門で飲食店を営んでいた知人が最近、店を閉めた。2次会客向けに酒を売っていたが、皆1次会で解散し帰宅してしまうため、商売あがったりというのだ。会社員の間では夜9時までが会食時間といった認識が定着し、以降は営業すればするほど損失を被る「赤字タイム」となった。夜12時まで酒を飲み、「そろそろ私たちが別れなければならない時間」という歌を聞いて席を後にしていたのが今となっては昔のこととなった。今では夜8時に従業員が近づいてきて「ラストオーダー(最後の注文)です」と言う。夜9時にはレストラン客がほとんどいなくなる。かつて、この時間帯は飲食店街がにぎわいを見せる時間帯だった。人件費や材料費の上昇、コロナ禍以降に定着した会食自制の雰囲気、共稼ぎの増加などが、「韓国人の夕食」に根本的な変化を与えている。

 韓国人の労働時間は2011年まではOECD(経済協力開発機構)加盟23カ国のうち最長だった。しかし、22年には5位にまで下がった。長時間労働を改善し、生活の質を高めることは肯定的だ。しかし、韓国を追い抜いていく中国は、仕事が与えられれば完遂するまで数日にわたる徹夜も辞さないといったニュースもしばしば耳にする。だとすれば、働く時間を短縮しつつも、より多く稼ぐ高付加価値の産業構造へと向かっていかなければならないが、われわれはそちらに向かって進んでいるのか疑問を感じることもある。

金泰勲(キム・テフン)論説委員

<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) Chosunonline.com>
関連ニュース
関連フォト
1 / 1

left

  • ▲イラスト=パク・サンフン

right

あわせて読みたい