20代の女性Aさんは1月3日、最近ソウル市城東区聖水洞にオープンしたイタリアの女性衣類売り場を訪れ、驚くべき経験をした。同売り場はイタリア・ブランドで、米国(カリフォルニア、ニューヨーク)をテーマにした衣料品店だ。さまざまなガールズ・グループのアイドルが身に付けたことで「アイドル・オタクの必須アイテム」として口コミで広がった。
陳列されている洋服を見ていたAさんがある従業員に「トイレはどこか」と尋ねると、従業員からは「ノーコリアン(No Korean.)」という答えが返ってきた。続けて「あと、どれだけかかりますか」という質問には理解できないといった表情で肩をすくめて見せた。「How long will it take?」と尋ねると、ようやく「サーティ・ミニッツ(Thirty minutes.)」という答えが返ってきた。Aさんは「ブランドコンセプトだけが米国なのかと思っていたが、店舗そのものが米国風のコンセプトだとは知らなかった」と話す。
同店で売られている洋服の値札の大半は、韓国ウォンだけでなく、米ドル、英ポンド、シンガポール・ドル、円、人民元などによる値段が併記されている。ここで働く韓国人従業員のカンさん(17)は「韓国人の従業員が不足していたことで、急きょ中国、日本国籍の従業員を採用した」とし「中国人の従業員が40人、日本人の従業員が10人ほどで、韓国人よりも外国人の方が多い」と説明した。
■「韓国の中の外国」と化した聖水洞
ソウル市城東区聖水洞が「韓国の中の外国」へと変わりつつある。1990年代までは立ち遅れた工業地帯とハンドメードの靴屋街として知られていた聖水洞は、2014年にソウル市の都市再生モデル事業に選定され、活気を取り戻し始めた。以降、カフェ通りなどが造成され、韓国人だけでなく、外国人からも愛されるソウルの代表的なホットプレース(話題のスポット)として位置付けられた。しかし、最近になって一部の店舗のメニューが英語のみで表示されたり、従業員のほとんどが外国人であったりするなどのケースが生じ「聖水洞が外国のように様変わりした」という声が聞かれるようになった。
実際に本紙記者が、外国人のよく訪れるヨンムジャンギルと聖水路一帯を調べた結果、外国語だけで顧客を応対している売り場が多数存在した。聖水洞のあるカフェは、メニュー板と案内文が全て英語で書かれてあった。「COFFEE(コーヒー)」と書かれた項目には「Americano(アメリカーノ)」、「Vanilla Bean Latte(バニラ・ビーン・ラテ)」、「Peanut cream Latte(ピーナッツ・クリーム・ラテ)」などのように、メニューが全て英語で表示されていた。「Roasted Walnut(ローステッド・ウォルナット)」のようにコーヒー豆の種類の表記も同様だった。
口座振替の際も銀行名が「SHINHAN BANK(シンハン・バンク)」となっていた。同コーヒーショップをよく訪れるという会社員のパク・ヨンミンさん(58)は「私のように年を取って英語に慣れていない人がこのカフェに来ると、まるでクイズショーにでも出演した気分になる」と話した。イ・ユンジョンさん(47)も「英語も英語だが、フォントが独特で何のメニューなんだか分かりにくい」という。