韓国放送通信委員会の李真淑(イ・ジンスク)委員長の弾劾訴追案を憲法裁判所は棄却したが、棄却の際に憲法裁判所は「国会による弾劾訴追権の乱用ではない」と判断した。「議決の手続きを経て弾劾対象者の法律違反行為が一定レベル以上疏明されたのであれば、憲法守護が目的だったとみるべきだ」「例え政治的な目的があったとしても、それだけで弾劾訴追権の乱用とは言えない」との判断を下した。野党・共に民主党は李真淑委員長就任前から弾劾を予告し、就任から2日で弾劾訴追した。しかも李真淑委員長の前には李東官(イ・ドングァン)、 金洪一(キム・ホンイル)委員長、さらには李相仁(イ・サンイン)放送通信委員長職務代行に対しても弾劾案を提出した。野党をひたすら後押しするMBCを死守するためだった。この動きのどこに憲法守護の目的があるのか。このような弾劾が乱用ではないとする憲法裁判所はまさに「常識外れ」と言わざるを得ない。
【写真】弾劾訴追案が出された韓国放送通信委員会トップの李真淑氏
共に民主党は尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権発足後、29件の弾劾訴追案を提出し、うち13件は一方的に可決させたが、その大部分が根拠のない政略弾劾だった。韓悳洙(ハン・ドクス)首相(大統領権限代行)は戒厳令宣布に反対したと伝えられているが、それでも「内乱」に関係した容疑で弾劾訴追した。実際の理由は、共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表の意向だった「尹大統領弾劾の速戦即決」に協力しなかったからだ。李在明代表の「防弾」のために、李在明代表を捜査した検事も弾劾訴追した。法律を悪用した巨大野党の暴力だ。それでもこれが乱用でないのなら、共に民主党に「弾劾暴走許可証」を出したようなものだ。
憲法裁判所は尹大統領の弾劾審理を迅速に行っているが、これは不確実性解消のため必要なことだ。しかし国政安定のためそれに劣らず重要な韓悳洙前代行の弾劾訴追案などは正式な弁論さえ始めていない。その一方で崔相穆(チェ・サンモク)権限代行が馬恩赫(マ・ウンヒョク)憲法裁判官候補を任命しないことが違憲かどうかについては3日に宣告するという。憲法裁判所の進歩(革新)派が尹大統領弾劾の可能性を高めるため馬恩赫候補の任命をごり押ししていると疑わざるを得ない。
尹大統領の弾劾訴追に対して認容を望む国民と棄却を望む国民が激しく対立している。どちらの結論が出てもさらに深刻な対立が予想されており、それに伴う国家的混乱を可能な限り防ぐためにも、憲法裁判所は誤解を受けるようなことはしてはならない。