控訴審で無罪判決、ソウル高裁は有罪を裏付ける数多の証拠に目をつぶったのか【2月5日付社説】 2018年蔚山市長選挙介入事件裁判

 ソウル高裁刑事2部が、文在寅(ムン・ジェイン)政権時代に起きた大統領府「蔚山市長選挙介入」事件の控訴審で、宋哲鎬(ソン・チョルホ)元蔚山市長と黄雲夏(ファン・ウンハ)議員に無罪を言い渡した。二人にそれぞれ懲役3年を言い渡した一審とは正反対に、判決をひっくり返したのだ。控訴審の裁判長は薛範植(ソル・ボムシク)部長判事、主審は李相周(イ・サンジュ)判事だ。この事件は2018年地方選挙当時、文在寅大統領の30年来の友人である宋氏を当選させようとして大統領府が介入した、というものだ。控訴審の無罪理由は「合理的な疑いの余地なく証明されなかった」というものだ。納得し難い部分は一つや二つではない。

【懲役3年→無罪】なぜ判断が変わったのか

 この事件の核心は、宋・元市長が選挙前に、当時の黄雲夏・蔚山警察庁長と会い、保守系野党(現在の与党『国民の力』)所属候補に対する捜査の請託を行ったというものだ。次いでその1カ月後、宋氏の側近である宋炳琪(ソン・ビョンギ)元蔚山市副市長が民情首席室行政官に、保守系野党候補の不正情報を提供して大統領府がこれを再加工し、「下命捜査」が行われたというものだ。実際に当時、宋氏の選挙陣営のメンバーだったユン・ジャンウ氏は「宋氏が黄庁長と会って野党候補関連の捜査を請託したという趣旨の話をするのを聞いた」と証言した。一審はこの証言の信ぴょう性を認めたが、控訴審はユン氏と宋氏が後に仲たがいをしたことなどを挙げて「信用し難い」として無罪を宣告した。だが当時、宋氏の陣営は相手候補に対する捜査の可能性を念頭に置いた選挙戦略を立てていた。ユン氏の証言が事実である可能性が高いにもかかわらず、控訴審は宋氏側にのみ有利に判断したのだ。

 控訴審は下命捜査についても「宋炳琪・元副市長が野党候補の不正疑惑を積極的に知らせたというより、大統領府行政官と対話して行政官の要請に基づいて陳情書を渡した可能性がある」とした。最初から下命捜査の意図があったのではない、というのだ。だが当時、黄庁長は捜査に微温的な警察官らを人事異動させた後、捜査を強行した。その後、保守系野党候補が公認を受けた日、候補の事務室を家宅捜索して冷や水を浴びせた。選挙直前まで、大統領府に捜査状況を18回も報告していた。この事件に加担したとの疑惑を持たれた大統領府民情首席室出身の検察捜査官が、自ら命を絶つという事件も起きた。違法下命捜査でないなら、こんな無理かつひどいことがなぜ起きたのか。

 文・前大統領はこの事件に対する検察の捜査を妨げるため、捜査チームを解散させた。前代未聞のことだった。無罪であるのなら。なぜこんなことをしたのか。蔚山事件の裁判は、ウリ法研究会出身判事の露骨な裁判引き延ばしのせいで、実に15カ月間も裁判が進まなかった。無罪であるのなら、なぜこんなことをしたのか。今回の控訴審判決は、山のようにある有罪の証拠に目をつぶったのではないか。大法院(最高裁に相当)で真実をはっきりさせねばならない。

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  • ▲黄雲夏・祖国革新党院内代表と宋哲鎬・元蔚山市長。/ニュース1
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