尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾審判で主審を務める鄭亨植(チョン・ヒョンシク)憲法裁判官の「錐(きり)で穿(うが)つような質問」が注目を集めている。12・3非常戒厳事態の中心的加担者である証人らに鋭い質問や指摘を行い、この事件の実体を把握する上で大きな役割を果たしているという評価が法曹界から出ている。
【写真】弾劾政局を左右する重要証言 「検挙要請」と記したメモ
■「議員を引っ張り出せ」証言の信ぴょう性を掘り下げ
鄭裁判官は6日に開かれた尹大統領の弾劾審判で、証人として出廷した郭種根(クァク・チョングン)元特殊戦司令官を相手に、およそ6分間にわたって質問を浴びせた。戒厳が進行中だった昨年12月4日午前0時30分ごろ、尹大統領から電話がかかって来たとき、郭・元司令官は正確にはどんな言葉を聞いたのか-と問いただした。「引っ張り出せ」の対象が国会議員なのか「要員(軍人)」なのかが論争になったからだ。
郭・元司令官は戒厳直後から、野党議員のユーチューブチャンネルや、国会の非常戒厳国政調査特別委などに出て「『国会議員を引っ張り出せ』という指示を受けた」と主張していた。この日の裁判でも国会側の「議員を引っ張り出せと言ったのは確実か」という質問に「正確にそうだ」と答えた。
しかし鄭裁判官は「最初は『人』だと言っていて後で『議員』だと言い、『連れて出て来い』だと語っていたのに『引っ張り出せ』と言ったという。証言が混在している」とし、「考えや解釈を排して(大統領から)聞いたことだけを正確に言いなさい」と指摘した。郭・元司令官が「自主書にそのように(国会議員だと)書かなかった」と答えると、鄭裁判官は再び「聞いたことを尋ねている。国会議員とは言わなかったのか」と追及した。すると郭・元司令官は「尹大統領が『まだ議決定足数は満たしていないようだ。早く国会のドアを壊して入って、中にいる“人員”を外に引っ張り出せ』と言った」と答えた。結局、「議員」を「人員」に訂正したのだ。
鄭裁判官は「法律家は、言葉が変わることによって証言の信ぴょう性を判断することになる」と語った。