戒厳令を宣布した本人・尹大統領のふに落ちない態度【2月12日付社説】

 尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は10日、拘置所で面会した自らに近い議員に「党が自由の守護、主権回復運動を心から後押ししてくれれば、国民の愛を受けられるのではないか」と述べたという。戒厳令は国民の自由と主権を軍隊を動員して制限するものだが、戒厳令を宣布した本人が自由や主権を語るのは前後のつじつまが合わない。戒厳令に対して米国や英国など自由民主諸国は「韓国の民主主義に対する深刻な脅威」「権威主義時代への回帰を思わせる」などと一斉に批判した。突然の戒厳令により、大韓民国がこれまで苦労して築き上げてきた民主国家としての立場も一瞬で墜落した。

 尹大統領は「生活が苦しい人たちや零細自営業者をしっかりと支援してほしい」とも述べた。先週の旧正月連休には「生活が苦しい方々も多いのに、寒さと生計がいかに大変か心配だ」とも懸念を示したという。戒厳令後はウォン安が進み、韓国の株価も下落した。ただでさえ厳しい庶民生活は一層凍り付き、国の信用等級が下落する懸念まで浮上している。忘年会や新年会なども次々とキャンセルされ、数百万人の零細自営業者なども顔のしわがさらに増えた。尹大統領は何よりも先に「私の責任」と言うべきだった。

 前回の弾劾審判弁論では「実際は何も起こらなかった」「湖に映る月を追いかけているような感覚だ」などとも述べた。国会議員の逮捕や流血事態などはなかったので、不法ではないというのだ。しかし武装した兵士たちが国会に乱入する様子を全ての国民がライブで目の当たりにした。犯行に失敗した人間が「何も起こらなかった」と言って誰が納得するのか。

 尹大統領の主張通り野党・共に民主党の防弾と相次ぐ弾劾など国政妨害が深刻なことと、多くの国民がこれに共感しているのは事実だ。しかしそれで戒厳令が正当化されるわけではない。戒厳令は憲法上の戦争やそれに準ずる事態でのみ宣布できる。韓国は戒厳後リーダーシップが崩壊し、米国のトランプ政権が世界経済や安全保障体制を毎日のように揺るがしているのに、韓国は対話もできない状態だ。尹大統領は自分の責任を認めた上で、国民に自らの思いを訴える姿勢を示してほしい。

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  • ▲尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領。2月11日撮影。/news1

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