現職の検事長が、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾審判を巡り「手続きを尊重しない憲法裁判所は日帝統治下の日本人裁判官よりひどい」と厳しく批判した。
【世論調査】「憲法裁を信頼しない」43% 韓国社会で不信感が拡大
春川地検の李映林(イ・ヨンリム)地検長(54)は12日、検察の内部ネットワーク「イプロス」に「日帝統治下の日本人裁判官よりひどい憲裁を見ながら」と題する文章を投稿した。李地検長は投稿で「手続きに対する尊重や心理的余裕のない憲裁の裁判官の態度は、日帝統治下の日本人裁判官よりもひどいと感じた」とつづった。
李地検長は「憲法裁判所の文炯培(ムン・ヒョンベ)裁判官は6回目の弁論で、証人尋問後に3分間の発言機会を要請した大統領に対し『だめです、お戻りください』と突っぱねた」として「非請求人である大統領の3分間の説明機会まで遮断し、大統領が自ら証人を尋問したことも認めなかったのだ」と続けた。その上で「これは憲裁が同日、請求人側の鄭清来(チョン・チョンレ)訴追委員長の要求に応じて追加の意見機会を与えたのとは対照的だ」と指摘した。
李地検長は、安重根(アン・ジュングン)が伊藤博文を暗殺して検挙され、裁判を受けた時に、日帝の裁判所が安重根に最後の陳述機会を与え、安重根が1時間30分にわたって意見を述べたことを紹介した。李地検長は「裁判所側は、安重根義士が自ら『言いたいことは全部言ったのでこれ以上話すことはない』と言うまで安義士の主張に耳を傾けた」とつづった。また「耳を傾けることは、他人の人生を断罪するという業務に当たる法曹人にとって基本的な素養だ」と主張した。
李地検長は「大韓民国は、手続き法の分野では宇宙最強ではなかったのか」として「『スパイ行為』を働いてもあらゆる主張を全て聞き、防御権の保障を理由に某政治家に放免の機会を与えたのではなかっただろうか」と指摘した。「政治家の放免」とは、2023年9月に裁判所が最大野党・共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表の逮捕状を棄却し、その理由として防御権保障の必要性を挙げたことに言及したとみられる。
また「憲裁は今、『これからは適法な手続きと防御権など重要ではない』と言っているのか」「誰かの利益のために誰かをスケープゴートにしているのでなければ、納得できる答えを国民に示すべきだろう」と主張した。
李地検長は「ただでさえ今の憲裁は、一部裁判官の偏向性の問題で資質や態度が疑問視されているのに、手続きや証拠法の問題を憲裁独自の方法と解釈で進めている」として「一部の裁判官の資質によって、今後憲裁もまた反憲法的・違法的な行為のせいで国民の判断の対象になるのではないかと懸念している」とつづった。
さらに「今の憲裁が大韓民国の憲法を守る機関としての資質を備えているのか疑問が湧いてくる」として「大韓民国のこんな姿を見るために、私の祖父が義兵を起こしたわけではなく、私の父が自由のために参戦したわけでもない」と書き込んだ。
李地検長は江原道江陵出身で、1998年に第40回司法試験に合格した。ソウル中央地検刑事6部長、ソウル南部地検の人権監督官、清州地検次長検事などを歴任し、2023年9月に検事長に昇進して大田高等検察庁の次長検事に任命された。昨年5月からは春川地検長を務めている。
ヤン・ウンギョン記者、ユン・ジョンホン記者