米国のトランプ大統領が進めるウクライナとロシアの平和交渉(休戦・終戦交渉)が本格的に始まったことを受け、現在ロシア南西部のクルスク州に派遣されている北朝鮮軍の動向に関心が集まっている。昨年11月に派兵された1万1000人以上の北朝鮮軍兵士はその後4カ月にわたりクルスク州でウクライナ軍との戦闘を続けているが、平和交渉の過程でこの北朝鮮軍が交渉の材料として利用される可能性も指摘されている。
ウクライナ政府のある高官は13日に本紙の電話インタビューに応じ「平和交渉に向けた『手続き面での前提』として北朝鮮軍の撤収を要求しなければ、北朝鮮軍は引き続き前線で戦闘を続ける可能性が高い」と述べた。これに先立ちウクライナ国防省情報総局(国防情報局)のバディム・スキビツキー副局長も7日に本紙の取材に「北朝鮮軍の4個旅団は今もクルスク州で戦闘に加わっており、1000人以上が新たに訓練を受けている」と述べ、北朝鮮軍がこの地域から退却あるいは移動する可能性は当分低いことを示唆した。
上記のウクライナ政府高官は「ロシアと北朝鮮が今も北朝鮮軍派兵を表向きは認めていない事実を念頭に置くべきだ」と指摘した。これはロシアが北朝鮮軍問題を平和交渉の議題としない可能性が高いことを意味する。ロシア軍は派兵された北朝鮮軍に偽造されたロシア人の身分証を支給し彼らの身分を偽装している。また北朝鮮軍派兵の証拠となる捕虜の発生を阻止するため負傷者は自爆させるか、死傷者が残る場所に大規模砲撃を行い遺体などの証拠をなくそうとしているようだ。
そのため交渉の過程で北朝鮮軍の存在を巡る綱引きが行われる可能性も考えられる。ウクライナ政府高官は「ロシアと北朝鮮に派兵の事実を認めさせるには何らかの『代償』が必要になるかもしれない」と述べた。北朝鮮が派兵を認め部隊の撤収を交渉の一つの材料とし、米国に譲歩を求めてくる可能性も考えられるという意味だ。北朝鮮に対する制裁の一部解除、核兵器保有の認定などが交渉テーブルに上がる可能性もある。
平和交渉が始まったことを受け、交渉で優位な立場を占めるためクルスク州を奪還したいロシア軍と北朝鮮軍の同時攻勢がさらに強まるとの見方もある。また大規模追加派兵の可能性も浮上している。ウクライナのゼレンスキー大統領は2日「北朝鮮が追加で2万-2万5000人以上を派兵する可能性があるとの情報を入手した」と伝えた。これについてウクライナ国防情報局も「さまざまな情報を通じて鋭意注視している」と明らかにしている。
プシェミシル(ポーランド)・キーウ=鄭喆煥(チョン・チョルファン)特派員