パナマでは、中国がパナマを「債務のわな」に陥れようとしている、という批判が起きました。スリランカが港湾建設の過程で中国に負った莫大(ばくだい)な借金を返せず、ハンバントタ港の99年間の運営権を渡したように、パナマでも同様の試みを行ったというのです。ユークリデス・タピア(Euclides Tapia)パナマ大学国際関係学部教授は「中国がアフリカとアジアでそうしたように、パナマを『債務のわな』にはめて港湾などに対するコントロール権を確保しようとした」と述べました。
米南方軍(SOUTHCOM)は、こうした中国の動きについて追跡し続けてきました。昨年3月、ローラ・リチャードソン南方軍司令官(陸軍大将、当時)は米連邦議会下院軍事委員会の聴聞会で「表向きは平和的に見えるが、有事の際に中国軍が深水港(deep-water ports)、サイバー攻撃施設、宇宙基地などとして活用できる戦略的要地を確保しようとするもの」と表明しました。
CKハチソン・ホールディングス・グループが1997年から運営しているバルボア港とクリストバル港については、これまで懸念は大きくありませんでした。香港の富豪・李嘉誠が創業したこの会社は、香港に拠点を置く多国籍企業です。ところが2020年に中国が「保安法」の制定を通して、事実上香港を統合する中で、事情が変わりました。中国軍が必要に応じていつでも両港を軍事的に活用できる法的な根拠が整ったのです。
■「台湾断交の見返りとして1億8000万ドルの賄賂」
パナマ運河は、台湾海峡で米中が衝突した際、米国東部の支援部隊がアジア・太平洋地域へ出動するルートです。米国は、中国軍がさまざまな手段を利用して有事の際にパナマ運河をまひさせようとする危険があるとみています。エバン・エリス(Evan Ellis)米陸軍戦争大学教授は、国際放送「ドイチェ・ベレ」のインタビューで「中国が船を沈めたり電算網をかく乱したりするなどさまざまな方法で、責任を回避しつつ運河をまひさせることがあり得る」と語りました。
中国がブラックマネーでパナマ政界を買収するかもしれない、という点も懸念されています。2017年に台湾断交を決めた当時のバレーラ大統領も、中国から賄賂を受け取って私腹を肥やした―という主張があります。パナマ市市長や米州機構(OAS)大使などを歴任したギレルモ・カーズ(Guillermo Cochez)氏は最近、コロンビアのテレビ局NTN24のインタビューで「バレーラ元大統領が17年に台湾断交の見返りとして中国から1億4100万ドル(約214億円)のカネを受け取り、彼が営むラム酒メーカーは中国で3800万ドル(約58億円)規模のラム酒供給契約を確保した」と語りました。
トランプ大統領は「中国軍がパナマ運河を運営している」として軍事力投入の可能性にまで言及しました。こうした主張は、トランプ特有の誇張法で、フェイクニュースだと判明しました。しかしトランプに批判的なニューヨーク・タイムズ紙なども「トランプのうそとは無関係に、パナマ運河に対する中国の影響力は懸念される」と報じました。この問題を巡り、米国は超党派の立場であるとみえます。
崔有植(チェ・ユシク)記者