10年前に牧場から逃げたシカが増殖、頭抱えるマンション住民 /全南・順天

 全羅南道順天市中心部のマンション周辺に、角を持ったシカの群れが出没し、住民たちが不安を訴えている。

【写真】マンション敷地内に出没するシカの群れ

 順天市が18日に明らかにしたところによると、インターネット・コミュニティー・サイトや交流サイト(SNS)にこのほど、「順天市内のあるマンションの近況」というタイトルでの動画・写真がアップロードされたという。これらには、市内のマンションでシカが飛びはねている様子が写っているとのことだ。烽火山のふもとにあるこのマンションでは、大きな角が生えているシカたちが群れをなして歩いている姿がよく目撃されているという。

 順天市によると、2010年代初めに同市内のシカ牧場から逃げた4頭が烽火山に住み着き、個体数が急激に増えているとのことだ。現在は60-70頭が生息していると推定されている。

 シカは烽火山の散策路周辺に現れ、のんびりと歩いたり、近くの東川まで下りてきたりと、地元民にはなじみのある存在だという。一部の市民の間では「散策路を歩いていると、運が良ければシカに会える」と好感を抱いている人の声もある。

 だがそうした一方で、烽火山周辺には大規模マンションや団地、大きな道路があるため、野生動物との衝突事故が懸念されており、市民の安全を脅かしているとして、対策を求める声も上がっている。シカは普段はおとなしいがが、10月から翌年1月までの交尾の時期には攻撃的な行動を取ることがある。

 昨年11月には京畿道水原市内で、住民がシカの角により負傷する事故が相次ぎ、警戒の声が高まっている。順天市内でも2023年4月、烽火山の近くでシカが暴れ、通報を受けて出動した消防隊員が負傷したことがあった。

 順天市ではフェンス設置やシカへのエサやり、去勢手術などの対策に苦心している。シカは畜産物衛生管理法上、野生動物ではなく家畜に分類され、深刻な農作物被害などを与えない限りは事実上、捕獲・殺処分が難しい。家畜は定められた殺処分手続きに従わなければならず、動物保護法を根拠に狩ることもできない。

 シカが増える根本的な原因である繁殖そのものを防ぐのも難しく、順天市では韓国環境部(省に相当)や動物団体などと協議している。シカは繁殖力が強く、全羅南道霊光郡の鞍馬島では、放置された十数頭のシカが30年間で約1000頭に増え、住民たちが集団で陳情したこともある。

 順天市では「現行法上、シカによる苦情が寄せられても、捕獲後に再び放すしかなく、これといった対策がない状況だ。シカの個体数をまず把握した上で、繁殖期に去勢手術が可能かどうか、関連法を調べている。万が一の事故に備え、早急に対策を講じる」と話している。

イ・ガヨン記者

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