韓国監査院が27日に公表した選挙管理委員会の採用などに関する不正の実態は想像を絶するものだった。選管がこの10年間に実施した291回のキャリア採用で、878件の規定違反が摘発されたのだ。違反がない採用は1回もなかった。採用公告もせずに選管職員の子女を内定したり、内部人事だけで試験担当者を構成して子女の面接点数などを操作したりもした。このようにして選管の事務総長・事務次長らの子女が恵まれた職を得ている一方で、一般受験者たちは不採用という被害を受けた。選管は採用不正に関する情報提供や通報があると「われわれはファミリー企業だ」「親族採用の伝統がある」という理由で黙殺してきたという。選管がマフィアと何一つ変わらないとは、あきれてものが言えない。
市・道選管の課長は8年間の勤務で817日間にわたり海外に滞在したが、このうち183日間は無断欠勤や虚偽の病気休暇だった。それにもかかわらず、全て通常勤務として処理され、国民の血税から3800万ウォン(約390万円)を受け取った。ロースクール進学のための休職は規定違反だが、卒業まで目をつぶってやったケースもあった。身内同士でポストを世襲し、便宜を図りながら国民の血税を吸い上げてきたのだ。監査が始まると、選管は不正に関する資料を消したり、虚偽の供述を強要したりした。国会が「選管内にいる親族関連資料」を要求すると「資料がないので提出できない」とうそまでついた。こうしたことは映画でしか見たことがない。
ところが、憲法裁判所は27日、満場一致で「選管は監査院の監査対象ではない」と決定した。監査院が選管の「採用不正」を監査すると、選管は憲法裁判所に権限争議審判を請求した。そして、憲法裁判所は「監査は違憲・違法だ」と判断した。憲法上、監査院の監査対象は「行政機関」だが、選管は国会や裁判所・憲法裁判所のように独立した憲法機構だというのだ。
監査院法には監査除外対象として国会・裁判所・憲法裁判所だけが明記されており、選管は対象から外されている。それにもかかわらず、憲法裁判所は同日、選管を監査するように監査院法を変更することもならないと述べた。憲法裁判所が法改正不可まで明言するのは異例のことだ。では、憲法裁判所はこの「マフィア」のような選管をどうしようというのだろうか。
「国会は選管を調査・監査することができる」というが、政治家たちは選管を意識しないわけにはいかない。捜査機関は具体的な不正疑惑が浮上しなければ選管を捜査できない。採用不正疑惑が明るみに出ると、選管は独自の監査を行うふりをしてうやむやにした。
こういった調子だから、選管は監視の死角地帯で「ファミリー企業」のようになり、腐敗を日常的に繰り返しているのだ。大統領選挙時に投票用紙を籠に入れて運び、既に記入されている投票用紙を有権者に渡すというミスの発生もこれに起因する。このような「ファミリー企業」が北朝鮮のハッキング攻撃を受けて気付くはずがない。この選管をどうすべきなのか、憲法裁判所が答えなければならない。