7日にソウル中央地裁が尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の勾留取り消し請求を認めたことで、尹大統領に対する逮捕状・勾留状を発布したソウル西部地裁の決定が議論の対象になっている。西部地裁は、論争になっている「高位公職者犯罪捜査処(公捜処)の内乱罪捜査権」を認めて2回も令状を発布したが、ソウル中央地裁は令状請求と執行を含め、捜査の過程に問題があったと判断したのだ。これに伴い、公捜処が令状を容易に取得しようとして裁判所・判事を選んだという、いわゆる「令状ショッピング」疑惑は一段と強まるものとみられる。
公捜処は昨年12月20日、尹大統領に対する逮捕状をソウル西部地裁に請求した。公捜処法では、一審管轄の裁判所はソウル中央地裁となっているにもかかわらず、公捜処は「犯行場所や被疑者の住所地等を考慮して裁判所を変更して請求した」と主張した。しかし法曹界では当時、進歩(革新)系最大野党「共に民主党」が推薦する鄭桂先(チョン・ゲソン)、馬恩赫(マ・ウンヒョク)憲法裁判官候補者がソウル西部地裁出身であることから、公捜処がここを選んだのではないか-と疑う声が上がっていた。
加えて、令状を発布した李珣衡(イ・スンヒョン)判事は逮捕状に、軍事上・公務上の機密地域における家宅捜索を制限する刑事訴訟法110条・111条の適用を「例外」とする文言まで書き加え、論争は拡大した。尹大統領側は西部地裁に、逮捕状についての異議申し立てを行ったが、棄却された。
公捜処は今年1月17日、尹大統領の勾留状もソウル西部地裁に請求した。当直判事だった西部地裁の車恩京(チャ・ウンギョン)部長判事は、勾留状を発布する際に「被疑者が証拠を隠滅するおそれがある」という、ハングルでわずか15字の事由しか明かさず、またも物議を醸した。
しかし公捜処が、尹大統領関連の捜査で捜索令状および通信令状をソウル中央地裁に請求して棄却されていたという事実が後になって判明した。ソウル西部地裁に尹大統領の令状を請求する際、棄却された令状の詳細内容を隠していたという疑惑も持たれている。
こうした公捜処の「令状ショッピング」疑惑等に対し、検察は捜査を展開している。ソウル中央地検刑事1部(金昇鎬〈キム・スンホ〉部長検事)は今月5日、「保守系与党『国民の力』の朱晋佑(チュ・ジンウ)議員による尹大統領関連の令状請求を巡る質疑に対して(公捜処内の)誰が答弁書を作成したのか特定してほしい」という内容の公文を公捜処に送ったことが分かった。これに先立ち2月28日には公捜処を家宅捜索し、尹大統領関連の令状請求の内容等を確保した。
法曹界からは「勾留取り消し決定が出たことで、令状を発布したソウル西部地裁の判断が俎上に載ることになった」という声が上がった。ある刑事訴訟法の専門家は「疑わしきは被告人の利益に、という方向で解釈するのが刑事訴訟法の大原則なのに、ソウル西部地裁が『公捜処の捜査の適法性』等を十分に問うことなく令状を発布したのではないか、と疑問が生ずることは避けられなくなった」と語った。
梁銀京(ヤン・ウンギョン)記者