パナマ運河でトランプに虚を突かれた習近平、李嘉誠に当たり散らす

■トランプ氏の側近が交渉主導

 しかし、ブルームバーグ通信は「トランプ政権の全面的な支持の下、今回の交渉が進められた」と報じました。ブラックロックのラリー・フィンク会長は一時、財務長官候補として取り沙汰されたこともあるなどトランプ大統領の側近です。フィンク氏はトランプ大統領はもちろん、ベッセント財務長官やルビオ国務長官に随時状況を報告し、取引を進めたということです。

 李嘉誠氏は今回の取引でかなりの実益を得ました。ハチソンの港湾事業部門は、グループ内の売上寄与度が低下し、収益率も低く、頭が痛い事業部門の一つでした。今回の取引前の港湾部門の評価金額は約105億ドルだったそうです。米中の間に挟まれて悩ましかったパナマ運河の二つの港を少なからぬ利益を得て、処分できたのです。

 発表後、香港は蜂の巣をつついたような大騒ぎになりました。親中メディアの香港大公報は3月13日、15日、17日に相次いで社説や評論を掲載し、李嘉誠氏を攻撃しました。同紙は「パナマ運河は全世界の海運物流量の6%、中国の貨物運送量の21%が通過する場所であり、米国の手に渡れば中国企業とサプライチェーンが大きな危険に直面するだろう」とし、「他人の意見になびいて米国にひざまずき、カネの前で大義を失った行為で祖国と民族、中国人全体を裏切った」と指摘しました。中国共産党と国務院(政府)香港マカオ弁公室もウェブサイトに大公報の評論を転載しました。

■「報告なしで売却…習主席激憤」

 香港の李家超(ジョン・リー)行政長官も「この問題をめぐる社会的な懸念を重視すべきだ」と同調しました。ブルームバーグ通信によると、国家市場監督管理総局など中国の政府機関も今回の取引が安全保障に問題にならないか精査しているといいます。

 中国の政府・党機関まで出てきたことは、最高指導部のムードが尋常でないことを意味します。ウォールストリートジャーナルは3月19日、消息筋の話として、「長江グループが中国当局に事前にこの取引を通知していなかった点などについて習近平主席が怒っている」と伝えました。同紙は「習主席ら最高指導部はパナマ港をトランプ政権と交渉する際に使う交渉カードと考えていたが、手を打つ暇もなくやられてしまった」とし、「党・政府機構まで乗り出したのは、米中の影響力争いの象徴とも言えるパナマ運河問題で米国に敗北したと映ることに対する習主席の不快感を反映している」と指摘しました。

 騒々しい世論戦が展開されていますが、中国がこの取引を覆すカードはありそうにないのが現状です。ハチソンは香港に本社を置いているが、ケイマン諸島に登記する多国籍企業で、中国本土・香港地域の売上比率が全体の約12%にすぎません。強圧的な手段を使えば、トランプ政権も黙ってはいないでしょう。

崔有植(チェ・ユシク)記者

【写真】李嘉誠氏を批判する親中メディア「香港大公報」

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