南北関係を「敵対的2国家」と宣言した金正恩(キム・ジョンウン)総書記の指示により、北朝鮮は全域を要塞化しているが、防壁を巡らせてフェンスを設置する費用があれば北朝鮮内の結核患者の治療や食糧難の解決も十分に可能だとの分析が示された。
韓国国防部(省に相当)が2日に明らかにしたところによると、北朝鮮が非武装地帯(DMZ)の端から端までの250キロ区間にコンクリートの防護壁とひし形フェンスなどの障害物を設置した場合、工事費用は最大で1兆5394億ウォン(約1500億円)に達すると推算されるという。
工事には年間369万人の兵力が動員されるため、この人件費3880億ウォンを加えると障害物の工事費用は最大で総額1兆9274億ウォンに達する見通しだ。
要塞化事業が始まった昨年7月の時点では、工事費は717億ウォンと推算されていたが、これは北朝鮮にいる結核患者の診療・治療に掛かる費用(241億ウォン)の3倍に達する。世界保健機関(WHO)によると、北朝鮮の結核患者は13万4000人で、注射薬などによる治療には1人当たり18万ウォンが必要だ。
また、この工事費は北朝鮮の2年分の食料費用に相当するという分析が示されている。北朝鮮では年間110万トンの食料が不足しており、市場のコメの価格を1トン当たり78万ウォンとして計算すると、年間8580億ウォンが必要ということになる。北朝鮮は1年間に不足する食料の購入費用の2.2倍を南北関係の断絶に費やしているわけだ。
韓国国防部は昨年7月、北朝鮮の要塞化に掛かる費用を推算した際、DMZ全体に防護壁とフェンスを設置するなら20年掛かると予測した。しかし、投入される兵力の規模によっては工事が加速する可能性もある。
北朝鮮はこれまでに冬季訓練を終え、先月初めからDMZの全ての地域で工事を再開しているが、地域ごとに一日数百人以上を動員しており、合計すると一日1500-2000人に達すると韓国軍当局はみている。
この過程で地雷が爆発し、北朝鮮軍の死傷者も発生したが、準備が不十分な状態で過度に兵力を投入し、工事の速度を上げる場合、要塞化が完成するまでの時間は短縮される見通しだ。
韓国軍合同参謀本部が昨年末に分析した内容によると、DMZ一帯の荒れ地の整備作業は約60キロにわたって進められ、全体の約25%が完了したと把握されている。フェンスは約40キロ、全体の約17%に設置された状況で、防壁は約10kmで進ちょく率5%程度であることが分かった。
韓国国防研究院(KIDA)安保戦略研究センターのパク・ヨンハン先任研究員は「膨大な費用を掛けて南北間の緊張を高めることが果たして北朝鮮の住民にとってプラスに働くのか、北朝鮮はあらためて考え直すべきだ」として「今後、韓国を排除したまま、米国とは低いレベルの非核化交渉を企てようという意図もあるようにみえる」と分析した。
チャ・ジョンスン記者