■「政治的決断の戒厳も司法審査の対象」
尹大統領側は「大統領の非常戒厳宣布は高度な統治行為であって司法審査の対象ではない」として弾劾却下を主張した。大統領だけが把握できるさまざまな情報を基に必要だと判断して下した政治的決断であって、起訴や裁判の対象になり得ない、というのだ。
これに対し憲法裁は「高位公職者の憲法および法律違反から憲法秩序を守護する弾劾審判の趣旨等を考慮すると、戒厳宣布が高度の政治的決断を要する行為であるとしても違憲・違法であるかどうかを審査できる」と述べた。また「戒厳の宣布に関しては憲法および戒厳法で要件や手続き、事後の統制などについて定めている」として、「戒厳宣布権は、重大な危機の状況に備えて憲法が重大な例外として認めた非常手段なので、憲法が定めた発動要件と事後統制等が厳格に順守されるべき」と指摘した。
■「たかだか2時間の内乱でも既に弾劾事由は発生」
昨年12月3日の非常戒厳は、国会の解除要求に基づき、わずか6時間後の翌日早朝に、特に被害もなく解除された。この点を巡って尹大統領は「たかだか2時間の内乱がどこにあるか」と述べ、野党の横暴を国民に知らせ、国会に警告するために実施した「警告性・平和的戒厳」だと主張した。
しかし憲法裁は4日の宣告で「戒厳が解除されたとしても、既に弾劾事由は発生した」とし、「大統領に対して弾劾するかどうかを審判する利益は認められる」という立場を取った。違憲・違法の戒厳宣布や布告令1号の発令、国会封鎖などの弾劾事由が戒厳解除前に既に発生した、と判断したのだ。
■「弾劾案の連続発議…会期が違っていれば適法」
尹大統領側は、国会が昨年12月7日に一度は否決された弾劾案を再度発議して通過させたのは誤りだと主張した。一度否決された案件は会期中に再提出できないという国会法上の「一事不再議」原則に背いたという主張だ。大統領に対する弾劾案は最初の否決から1週間後の昨年12月14日に国会を通過した。
しかし憲法裁は、2件の弾劾案はそれぞれ別の会期に発議・提出され、問題はないとみなした。憲法裁は「大統領に対する1回目の弾劾案は418回国会で投票が不成立となり、2回目の弾劾案は419回国会で発議されて票決が行われた」と説明して「国会法に違反しない」と判断した。また「大統領に対する弾劾訴追要件が厳格という理由だけで弾劾案の発議回数を1回に制限するのは困難」とも述べた。
パン・グクリョル記者、ユ・ヒゴン記者