■「金建希夫人リスク」「韓東勲との反目」で危機
民主党は尹前大統領夫人の金建希(キム・ゴンヒ)夫人氏もしつこく攻撃した。夫人と関連しては、ドイツモータースの株価操作疑惑、ブランドバック受領疑惑、人事への影響力行使論争が起き、民主党は特別検事の任命も提案した。国民の力の一部からは「夫人の問題をまず解消しよう」との主張が出たが、尹前大統領は妥協しない態度で一貫した。国民の力関係者は「昨年12月の非常戒厳直前にも夫人の特別検事法案問題が政治争点化するなど、問題に適切に対応できず、政権のアキレス腱になった」と話した。
政権与党だった国民の力に対する尹前大統領のリーダーシップも正常には働かなかった。尹前大統領が与党の代表をたびたび交代させ、統治基盤を揺るがしたとされる。国民の力関係者は、検事時代から側近とされていた韓東勲(ハン・ドンフン)元国民の力代表との対立が尹前大統領にとって政治的致命傷となったと指摘する。尹前大統領は総選挙を4カ月後に控えた2023年12月、法務部長官を務めた韓元代表を国民の力の非常対策委員長に就任させ、総選挙の指揮を任せた。しかし、金建希夫人問題で二人は対立し、尹前大統領による昨年12月の非常戒厳宣言で二人の関係は破局を迎えた。国民の力の親韓東勲系議員らが民主党主導の大統領弾劾の動きに加わり、尹前大統領は昨年12月14日、国会で弾劾訴追された。
■韓米日協力の強化は成果
尹錫悦政権は労働、年金、教育、医療の四大改革を推進したが、尹前大統領の弾劾で実を結ばなかった。特に医学部増員など医療改革では医療界と政府の対立が深刻化した。政府が医療現場の混乱を招いたとの指摘を払拭できないまま、問題は次の政権に持ち越しとなった。
ただ、「労組の会計決算公示」など労働改革を通じ、年間勤労損失日数を減らした点、原発産業を復活させた点、防衛産業の輸出拡大などは尹錫悦政権の成果として挙げられる。専門家は韓米同盟を正常化し、韓米日協力を強化したことも成果だと評価する。尹前大統領は、米国と核問題を扱う二国間協議体である核協議グループ(NCG)を発足させ、日本とは首脳シャトル外交を復活させた。尹前大統領は2023年に米国で韓米日3カ国首脳会議を行い、3カ国の協力を強化する内容のキャンプデービッド宣言を取りまとめた。
梁昇植(ヤン・スンシク)記者