北朝鮮がウクライナと戦争中のロシアに多くの兵士を送り込み、また弾道ミサイルや弾薬などの武器まで支援した見返りとして28兆7000億ウォン(約2兆8000億円)の経済的利益が得られるとの分析結果が8日に公表された。これは北朝鮮住民の6年分の食料を購入できる額だ。
韓国国防部(省に相当)傘下の韓国国防研究院が公表した報告書によると、北朝鮮は昨年10月の第1次、今年1-2月の第2次の2回にわたり合計1万4000人以上の兵士をロシアに送り込んだ。北朝鮮はその見返りとして兵士1人当たり少なくとも月2000ドル(約29万円)と所定の一時金を受け取るという。派兵期間を1年とした場合、派兵に伴う外貨収入は総額4000億ウォン(約390億円)に達すると試算されている。ウクライナ軍の捕虜となった北朝鮮軍兵士の証言や国家情報院(韓国の情報機関)などによると、派兵により得られる資金のほとんどは北朝鮮政権が手にし、ごく一部だけが兵士に支払われるという。一時金や戦死者の補償金などは流動的なため、支給額は今後膨れ上がる可能性もある。
偵察衛星などで確認したところ、北朝鮮は122ミリと152ミリ砲弾、対戦車ミサイル「プルセ(火の鳥)4」、短距離弾道ミサイル「KN23」、対戦車ロケット砲RPGなど数々の武器や弾薬を船舶用コンテナだけで約2万1000個分ロシアに送った。車両、列車、航空機で送った分も含めればさらに多くの物資を送ったと考えられる。これらを合計すれば武器の販売代金は27兆4000億ウォン(約2兆7000億円)に達すると試算されている。北朝鮮はこの額を現金はもちろん、最新型の兵器など現物でも受け取ったと考えられる。
北朝鮮は今回の派兵で人工衛星や原子力潜水艦など、戦略兵器の技術提供も受けたと推測されているが、これを金額に換算すれば9000億ウォン(約880億円)に達するという。ロシアはすでに関連分野の科学者を北朝鮮に派遣し、技術移転を進めているようだ。
国防研究院核安保研究室のパク・ヨンハン研究員は「北朝鮮が受け取る28兆7000億ウォンは北朝鮮の年間食糧必要量(約550万トン)の6年分を購入できる額だ」とする一方で「しかしこれらの資金は大陸間弾道ミサイル(ICBM)開発、さらに年間2兆5000億ウォン(約2400億円)に達する特権階級のぜいたく品購入に使われる可能性が高い」と予想した。
盧錫祚(ノ・ソクチョ)記者