ロシア・メディアとSNS(交流サイト)で紹介されたクレムリン(ロシア大統領府)によるバージョンでは「黒く汚れた悪魔のような姿のロシア軍が、スジャ北部のウクライナ防衛線の後方からなだれ込んで奇襲攻撃を仕掛け、銃弾が飛び交う激戦の末に敵『ウクライナ軍』を壊滅させた」と表現している。ロシアでは兵士たちは「戦争の英雄」として美化された。
しかし、ウクライナ軍参謀本部は同日「適切な時期に空中での偵察を通じ、ガス管を移動する敵の兵力を感知した。顔に黒いすすがべったりと付いた100人ほどのロシア兵は、飛び出すと同時に8割は我々の包囲攻撃を受けて即座にせん滅した」と反論した。ウクライナ軍はこのロシア軍の作戦について「数百人がガス管の中で窒息し、ばい煙によって中毒死する『虐殺』だった」と主張した。
実際、ウクライナ軍のドローンがガス管の中から出てくるロシア兵を撮影した映像が公開されたことを考えると、ウクライナ軍はある程度この「ガス管奇襲作戦」を予想していたとみられる。
ウクライナの戦況をモニタリングしている「ウクライナ・コントロール・マップ(UAControlMap)」はテレグラフに対し「しかしウクライナ軍も現場にはいなかったため、ドローンと砲による攻撃に頼った」と説明した。あるウクライナ軍将校は「ロシア兵が無線で『死ぬために送られた』と文句を言っていた」と明かした。
もし米国が情報を遮断しなければ、ウクライナはもっと徹底して備えられただろうか。奇襲攻撃があった翌日の3月9日、ロシア軍はスジャ北部の三つの村を奪還し、3月13日にはスジャ全域を完全に奪還した。現在、ウクライナ軍は国境に近いクルスク州の高地でロシア軍と交戦している。
ロシア・メディア「RT」は3月11日「前線での劇的な変化は、ロシアの極秘『ポトク作戦』のおかげだ」と主張した。しかし、西側の分析家たちは、スジャ地域からはすでにウクライナ軍が撤退中だったと述べている。軍事専門家でウクライナ保安庁の元要員だったイワン・ストゥパク氏は、テレグラフに対し「すでにウクライナ軍の状況は厳しく、兵力も消耗しており、数的にも圧倒されていた。米国による情報遮断は、そのような原因の一つにすぎない」と語った。
ロシアのある独立系ジャーナリストは、秘匿性の高いメッセージアプリ「テレグラム」に「まるで聖書に出てくる話のように、兵士たちが地面の中から出てきて祖国を救ったというストーリーだが、結局はロシア軍を英雄に仕立て上げるための神話にすぎない」と書き込んだ。
李哲民(イ・チョルミン)記者