統計データ捏造疑惑浮上に文在寅元大統領「KB国民銀行の住宅価格統計をなくすか、制裁案を検討せよ」と指示していた【独自】

 文在寅(ムン・ジェイン)政権は週間住宅価格上昇率の統計データ捏造(ねつぞう)を続けていたが、これがKB国民銀行の毎週発表する住宅価格統計と比較され「捏造疑惑」が浮上したため、文在寅元大統領が「KBの統計をなくすか、制裁できる案を検討しろ」と指示していたことが監査院の監査で明らかになった。

【統計データ捏造】当時の関係者の発言と監査院報告の概要

 監査院が17日に公表した文在寅政権による統計操作監査報告書によると、文在寅政権は韓国不動産院が毎週発表する「全国住宅価格動向調査」の数値を少なくとも102回捏造(ねつぞう)していたという。期間は2018年1月から21年10月までの3年10カ月に及ぶ。この統計は全国のマンションなど住宅価格が1週間前に比べてどれだけ上昇あるいは下落したかを毎週公表するもの。文在寅政権当時の青瓦台(韓国大統領府)と国土交通部(省に相当)は韓国不動産院の調査結果を公表前から事前に入手し、住宅価格上昇率が高いと判断した場合は不動産院に圧力をかけ、上昇率を意図的に低くさせていた。

 問題はKB国民銀行も毎週住宅価格の変動率を発表していたことだ。そのため不動産院の数値は発表のたびにKBの発表と比較されていた。例えば2020年8月第4週から10月第4週までの期間、不動産院はソウル市内のマンション価格が10週連続で前の週に比べて0.01%の上昇にとどまったと発表していた。青瓦台と国土交通部が捏造を指示しでっち上げられた数値だった。しかし同じ期間のKBの発表ではソウル市内のマンション価格上昇率は0.222-0.382%で、最大38倍もの差が開いていた。

 国会やメディア、市民団体は2018年から不動産院とKBの発表内容を比較し「不動産院の発表内容は信頼性に問題あり」と指摘した。また20年7月に当時の金賢美(キム・ヒョンミ)国土交通部長官は国会での答弁で「文在寅政権発足から3年2カ月間、ソウル市内のマンション価格上昇率は11%」と答弁したが、これも不動産院が発表した数値を根拠としていたため大きな問題となった。

 不動産院による統計の信頼性は2020年10月16日、国会国土交通委員会での国土交通部に対する国政監査でも問題になった。この国政監査はライブ中継され、文在寅元大統領もテレビで見ていたという。

 監査院が確保した資料によると、不動産院の統計の信頼性が問題となった直後に文在寅元大統領が「激怒」し、この問題を解消する方策を取りまとめるよう指示したという。この指示は青瓦台住宅都市秘書官室と国土交通部を経て不動産院に伝えられた。その後、不動産院の職員が院長に「(国土交通部の)A課長から要請があり報告します。今日国土交通部の国政監査をご覧になったVIP(文在寅元大統領)が激怒され、指示が下されたようです」と報告したが、その指示内容が記載されたモバイルメッセンジャー(携帯電話などのメッセージアプリ)の記録を監査院は確保した。

 この記録によると、文在寅元大統領は「不動産院の住宅動向(統計データ)とKBの動向(統計データ)を統合する方策を検討せよ」と指示したようだ。政府が不動産院の統計を管理していた現状を考慮すれば、事実上KBの統計データとの統廃合指示と解釈できる。文在寅元大統領は「(不動産院の)住宅動向(統計データ)の標本数を10万に増やすとかして、民間の統計を圧倒的に上回る方策を検討せよ」とも指示した。不動産院で統計の標本数を大幅に増やし、不動産院の統計がKBの統計よりも信頼性が高いと評価されるようにせよという内容だった。

 文在寅元大統領の指示を受けた国土交通部は、自分たちが不動産院の統計を操作し問題になっている事実を知っていたが、これを隠し「民間の統計」を改善する方策として「住宅統計改善案」と題された文書を作成した。この文書で国土交通部は「民間の統計は統計法に基づく品質診断など、厳格なプロセスによる管理が不十分」「民間の統計は活用段階から自律的・法的規制を受けていない」などと批判した。また民間の統計に対する認証制度を導入し、この基準に反した場合は過料を賦課する案を提示した。

 国土交通部による一連の「KB統計制裁策」は青瓦台に報告され、文在寅元大統領は10月26日に青瓦台首席補佐官会議で改めて「信頼性・代表制に問題がある民間の統計との『協力』の必要性を検討せよ」と指示した。

 文在寅元大統領の追加の指示を受けた国土交通部は「大統領の指示事項実行計画」と題された計画書を作成した。この計画書には「住宅統計革新委員会」という組織を立ち上げ、KB統計など民間の統計に対する「自律規制」を推進するなどの内容が記載されていた。「KBの統計は廃止に誘導するが、国土交通部が前面に立てば政府による不当な介入として問題になる懸念があるため、不動産院を前面に出す」という記載もあった。

 文在寅前政権によるKB統計の制裁・廃止計画は最終的に実行には移されなかった。監査院は「文在寅前政権がこの計画を内部で検討した際『民間の統計を政府が制裁できる法的根拠がない』などの意見がでたため、文在寅前政権はこの計画を断念したのでは」と推測している。ただしKB国民銀行は実際に2020年10月に週間統計の発表を中断したが、直後に「政府の外圧」として問題になったため発表を再開した。当時国土交通部は「KBによる(統計発表中断の)意志決定を巡っては、政府はKBと事前にいかなる話し合いや協議も行っていない」と主張した。

金耿必(キム・ギョンピル)記者

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  • ▲青瓦台(韓国大統領府)与民館で開催された首席補佐官会議で発言する文在寅(ムン・ジェイン)元大統領。2022年4月25日撮影。/青瓦台
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