韓国国会は17日、大統領(権限代行)が再議を要求した商法改正案など8本の法案を再採決し、放送法改正案を除く7本を否決。尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権発足後に繰り返された巨大野党による争点法案の一方的処理と大統領の拒否権行使による政局が一段落した。170議席を占める議会第1党の共に民主党は、政府・与党の反対にもかかわらず争点法案を一方的に処理し、尹錫悦政権は憲法に規定された大統領拒否権で対抗した。尹政権はそうしたやり方で、民主党が推進した41本の法案のうち40本の法制化を阻止した。
しかし、約40日後に迫った次期大統領選挙で、民主党の李在明(イ・ジェミョン)候補が勝利した場合、法案の大半は再提出され、法制化される可能性が高い。大統領が拒否権を行使する可能性がなくなるためだ。経済専門家は「民主党がゴリ押しした経済関連の争点法案が現実となれば、強硬労組と少数株主の干渉で企業の経営の自由が縮小され、無分別な歳出で財政の健全性が悪化する可能性が高い」と話した。
2022年5月に尹錫悦政権が発足後、大統領(権限代行を含む)は民主党が国会で一方的に処理した41本の法案に拒否権を行使した。このうち、大統領が2回以上拒否権を行使した法案、拒否権行使後に与党・国民の力と民主党による合意で可決された法案、特別検事法案などを除いた経済関連の争点法案は約10本だ。そのうち相当数は企業の自由な経営権行使を制限する内容を含んでおり、財界が懸念している。
別名「黄色い封筒法」(労働組合および労働関係調整法改正案)が代表的だ。黄色い封筒法は労組の違法ストライキで会社が被害を受けた場合、個々の労働組合員の責任を会社が立証することを求める内容を含んでいる。財界は「会社側に一方的に不利な法案」だと指摘する。韓国経済人協会関係者は「労組がストライキで会社の器物を破損しても、誰が破損したのか、防犯カメラ映像がなければ責任を問いにくくなる」と話した。黄色い封筒法案が成立すれば、下請け労働者が元請け企業を相手に労使交渉を行うことが認められ、会社側の負担が増すとの指摘もある。
「株主に対する理事(取締役)の忠実義務」を新設した商法改正案が現実となれば、企業が打撃を受けると懸念されている。企業は長期戦略を立てにくくなるとみられている。例えば、会社が新事業に進出し、巨額の研究開発費と設備投資費を投じる場合、短期的に財務状況が悪化し株価が下落する恐れがある。経営陣が長期的な視野で投資を決めたとしても、民主党の商法改正案が成立して施行されれば、株主は「会社が株主の利益を侵害した」として会社側を提訴することができる。国会が企業に資料提出を要求した場合、企業がそれを拒否できない国会証言鑑定法改正案も企業の心配の種だ。
民主党の李在明(イ・ジェミョン)前代表のよる総選挙での公約に沿った「全国民25万ウォン支援法」は所得水準と関係なく全国民に25万ウォン(約2万5000円)を支給する内容だ。施行されれば13兆ウォンが投入される。内需拡大を名分に掲げてはいるが、梨花女子大経済学科の石秉勲(ソク・ピョンフン)教授は「高所得層にも25万ウォンを配る政策は内需浮揚効果が限定的だ。国の財政負担だけを増やし、未来世代に借金を残すことになる」と話した。
大統領の拒否権行使で廃案となった農業4法案(穀物管理法、農水産物価格安定法、農漁業災害対策法、農漁業災害保険法)は、市場の余剰米を国が買い入れ、野菜などの価格下落で発生した生産者の損害を国が補填する内容を含んでいる。尹錫悦政権は「コメなどの供給過剰が懸念され、財政負担を招く」として反対した。韓国農村経済研究院が2022年に分析した結果、穀物管理法改正案が施行されれば、コメの義務的買い入れ費用は2030年に1兆4659億ウォンに達する。
ただ民主党内からは「政権を握れば無条件に推進するわけではない」という声もある。政策を執行し、責任を負う政権与党になれば、立場が変わることもあり得るというのだ。民主党指導部の国会議員は「民主党が一方的に処理した法案の中には、「毒素条項」(法律の意図する内容を巧みに制限する条項)が取り除かれていない法案も一部ある」とし、「さまざまな疑惑を糾明するための特別検事法案を除けば、再検討の過程を経なければならない」と話した。民主党は文在寅(ムン・ジェイン)政権の当時も、政権獲得前に公言していた公約の相当数を財政負担などを理由に実行できなかった。例えば、授業料半額政策では1兆ウォンを超える追加歳出によって対象を大幅に大幅に増やすと言っていたが、政権発足後にはそれを実現できなかった。
イ・セヨン記者、権純完(クォン・スンワン)記者、パク・サンギ記者