次の大統領選挙に向け共に民主党は李在明(イ・ジェミョン)候補を選出した。合算得票率89.77%と90%近い支持を獲得した。李在明候補は指名受諾演説で「イデオロギーと陣営にとらわれて分裂を繰り返す時間はない」と訴えた。演説で「統合」は14回、「成長」は5回言及した。3年前の候補受諾演説で強調した「基本所得」は1回も語らなかった。
【グラフ】党内予備選で歴代最高の得票率 共に民主・李在明候補
李在明候補は今回が3回目の大統領選挙への挑戦となる。2017年には文在寅(ムン・ジェイン)元大統領に予備選挙で敗れ、21年には50.29%で候補に選出されたが、本選挙で0.73%ポイント差で敗れた。
李在明候補は大統領選挙に敗れた直後から異例にも補欠選挙に出馬して国会議員となり、党内の権力を確保した。その後共に民主党が掌握した立法府は李在明候補の政治的防弾に動員された。前回の総選挙では「非明横死」と呼ばれる党公認手続きで李在明候補をけん制する勢力は姿を消し、共に民主党は過去に例のない「独裁政党」になった。
今回の予備選挙で李在明候補の得票率は90%を記録した。これは確固たる党内基盤を誇っていた金大中(キム・デジュン)元大統領や朴槿恵(パク・クンヘ)元大統領でさえ得られなかった数値だ。ライバルとなる候補者から「90%近い票が集中するのは健全ではない」と批判が上がったほどだ。現時点で誰よりも支持率が高い李在明候補が大統領となれば、立法と行政の権力が1人に集中することへの懸念が高まっている。李在明候補が「統合と共存」を強調するのも、このような権力集中への懸念を意識しているためだろう。
李在明候補は先日「国家の富は企業が生み出す」と述べるなど、ここ最近は連日のように企業寄り・市場寄りの姿勢を強調している。しかし共に民主党が掌握している国会はこれまでの3年間、重大災害処罰法や「黄色い封筒法」など反企業的な法律を次々と成立させてきた。そのため何が李在明候補の本心か疑いを抱く国民から、いかにして信頼を得るかという課題が残ってしまった。
李在明候補は「戦争の脅威がなくなれば、株価指数5000も決して夢ではない」と主張している。しかし今韓国経済の足下をすくいかねない問題は安全保障上の脅威ではなく、主力産業で革新が起こらず、人材が流出し過激な労働組合が企業経営の足かせとなっている構造的な問題だ。そのためこれらに対する解決策を提示することが李在明候補には求められている。
李在明候補は現在、大法院(最高裁判所に相当)で審理が行われている選挙法裁判を含め、偽証教唆、大庄洞、北朝鮮への不法送金、法人カード流用など12の容疑で五つの裁判が進行中だ。李在明候補が大統領に当選した場合にこれらの刑事裁判がどうなるか、この点が選挙戦で大きな問題となるのは避けられない。
李在明候補は「礼訟論争(朝鮮王朝時代の礼節についての論争)のような無駄な論争に陥ることなく、実用的な観点から違いを乗り越え、統合に向けてわれわれの潜在力を最大限に引き出したい」と訴えている。李在明候補のこの言葉が選挙で票を得るための一時的な変化でないことを願いたい。