北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は25日、同日執り行われた5000トン級駆逐艦の進水式に娘のジュエ氏を連れて姿を現した。金正恩総書記の妹の金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長をはじめとする党、政府、軍の幹部らも息子・娘や孫たちと共に金正恩総書記専用列車で平壌から訪れた。代を受け継いだ忠誠を強調する狙いがあるとみられる。
駆逐艦進水式の様子は朝鮮中央テレビが26日に1時間7分の映像で伝えた。この映像を見ると、金正恩総書記は防弾列車として知られる専用の特別列車を利用して南浦造船所を訪れたようだ。朝鮮労働党の趙春竜(チョ・チュンリョン)軍需工業担当秘書が金正恩総書記とジュエ氏だけの使用する特別列車の車両に入り、進水式の準備が完了したことを報告した。これに金正恩総書記が「うまくいったか?」と短く確認し、直後にジュエ氏と共に会場に向かうため列車を降りる様子も映っていた。
映像には幹部らが息子・娘や孫たちとみられる子供らの手を取り列車から降りる様子も映っていたが、その中に金徳訓(キム・ドクフン)朝鮮労働党経済秘書ら主要な幹部の姿も見えた。金与正副部長も息子・娘とみられる子供たちと共に列車を降り、車で移動する様子が確認できた。
キム・ジュエ氏は昨年の朝鮮人民軍海軍司令部訪問時と同じく今回の進水式にも白のジャケットと黒いパンツのフォーマルな服装で金正恩総書記のすぐ横に居続けた。北朝鮮メディアはジュエ氏が朝鮮人民軍の軍歌を歌う様子や、金正恩総書記が進水式演説で「韓米合同軍事演習は北朝鮮への核攻撃を想定した挑発」という趣旨の発言を行った際にうなずく様子などを映し出した。進水式が終了するとジュエ氏が金正恩総書記と腕を組んで「崔賢(チェ・ヒョン)」と命名された駆逐艦を視察する姿も見えたが、これは数分かけて映し出されたため特に強調したかったようだ。ジュエ氏の耳打ちに金正恩総書記が笑顔を見せる様子も見えた。金正恩総書記は海兵らとの記念撮影後、すぐ横に立っていた海兵の海軍帽をかぶるなど、ご機嫌な様子だった。金正恩総書記とジュエ氏はロシアのプーチン大統領からプレゼントされた高級車「アウルス」に乗り次の場所に移動した。
北朝鮮メディアは金正恩総書記とキム・ジュエ氏に同行し進水式に出席した幹部らを紹介したが、その中に2カ月にわたり行方不明となっている趙甬元(チョ・ヨンウォン)組織指導部長の名前はなかった。趙甬元は進水式から2日後の27日、北朝鮮メディアを通じて地方工業工場製品説明会に出席する様子が報じられた。趙甬元は22日から26日まで開催された地方工業工場製品品評会に姿を現したが、写真では関係者に何かを話している様子だった。2カ月以上も行方が分からなかった趙甬元が北朝鮮メディアに再び登場したことで、「謹慎」程度の軽い処分で終わったとの見方が有力視されている。ただし職責が以前と同じかどうかは引き続き確認が必要だ。
キム・ミンソ記者