韓国では大統領職が犯罪者の逃避先になりかねないという合理的な懸念【5月8日付社説】

韓国では大統領職が犯罪者の逃避先になりかねないという合理的な懸念【5月8日付社説】

 ソウル高裁が、今月15日と決めていた、進歩(革新)系「共に民主党」所属の李在明(イ・ジェミョン)大統領候補の選挙法違反事件破棄差し戻し審の初公判を、大統領選挙後の来月18日に変更することとした。高裁は「均等な選挙運動の機会を保障し、裁判の公正性を巡る論争をなくすためのもの」とコメントしたが、裁判所のこうした釈明を信じる人は少ないだろう。大法院(最高裁に相当)がこの事件を破棄差し戻ししたすぐ翌日に、高裁は事件の割り当てを行い、裁判部は裁判日を15日と定め、李候補に召喚状を送った。そこまでした裁判部が突然、裁判を延期したのは、裁判所と裁判官に対する民主党の圧力のせいだろう。大庄洞事件の裁判も大統領選挙後の6月24日に延びた。

【表】李在明候補のための「防弾法案」

 民主党は裁判所に、李候補のあらゆる裁判日程を大統領選挙後に延ばしてほしいと要求し、これを受け入れないのなら曺喜大(チョ・ヒデ)大法院長=最高裁長官に相当=はもちろん、破棄差し戻し審の担当判事らを弾劾することもあり得ると公言した。選挙法違反事件は1年以内に大法院での宣告まで終えるよう、法が定めているが、李候補の事件は2022年9月の起訴から2年7カ月も続いた。とうに終わっているべき事件が、大法院の判決後も、立法権力の脅迫で再び延期されたのだ。大法院の破棄差し戻し判決について「一時のハプニング」と言っていた李在明候補は、高裁が裁判を延期するや「憲法の精神に基づいた適当な決定」「依然として司法府を信頼している」とコメントした。

 民主党はこの日、被告人が大統領に当選した場合には刑事裁判を停止するという内容の刑事訴訟法改正案と、虚偽事実公表罪の条項を変える選挙法改正案も常任委で相次いで通過させた。選挙法違反で裁判中の李候補が大統領に当選した後、当選無効刑を受けた場合、大統領職の正当性が問題になりかねないので、これを元から遮断するための法案だ。これらの法が実行されたら、殺人や贈収賄といった犯罪に手を染めても大統領に当選しさえすれば裁判が中止される。この日、法務部(省に相当)が「大統領職が犯罪者の逃避先になりかねない」とコメントしたが、合理的な懸念だ。

 民主党は、裁判所の裁判延期発表とは関係なしに、大法院長と大法官を対象とする今月14日の聴聞会の計画書を議決した。証人リストには曺喜大大法院長を含む12人の大法官が全員含まれていた。自分たちに不利な判決を出したからと、大法院長と大法官に弾劾すると脅すだけでなく、聴聞会で恥をかかせようというのだ。

 大統領選挙は終わってもいないが、有力候補と立法権力は司法府を脅迫し、司法府は将来の権力の顔色をうかがい始めた。これでも安心できないのか、李候補にとって障害になり得る問題を元から遮断するための法律も軍事作戦のように処理した。驚くべきことがめったやたらと繰り広げられている。

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