親中国家のパキスタンは22年3月にJ10Cの輸出型であるJ10CF戦闘機25機を初めて導入し、現在およそ20機を運用している。1機あたりの平均購入価格は6500万ドル(現在のレートで約94億5000万円。以下同じ)だという。米国・日本・オーストラリアと共に4カ国安全保障共同体「クアッド(QUAD)」を結成し、西側との軍事分野で協力してきたインドは、16年から88億ドル(約1兆2800億円)を投じて計36機のラファールを導入してきた。1機当たりの平均価格は2億1800万ドル(約317億円)に達する。ラファールが、値段でいえば3分の1にもならない中国の戦闘機と競り合って負けた、ということになる。
当時のカシミール上空における印パ両国空軍の交戦状況は、具体的には明らかにされていない。パキスタン空軍が数的にインド空軍を圧倒した可能性、または戦闘機ではなく防空網が発射したミサイルによって撃墜された可能性なども提起されている。
中国は、米国とグローバル覇権を争っているが、中国製の兵器は米国製や欧州製に比べて桁外れに安いものの性能や信頼性が低く、実戦では値打ちがないという評価が支配的だった。このため、今回の件を契機として防衛関連業界で「中国製兵器も使える」という認識が生まれるかもしれない、という評価が出ている。特に、米国製兵器への依存度を下げようとフランス製に目を向けてきた中東や欧州、アジアの国々の考えが変わることもあり得るのだ。特に今、エジプトとウズベキスタンで自国製のラファールが中国のJ10Cと熾烈な販売競争を繰り広げているフランスにとっては、緊急事態になりかねない-という見方が出ている。
パリ=鄭喆煥(チョン・チョルファン)特派員、北京=李伐飡(イ・ボルチャン)特派員