真実を伝えた職員2人死亡 パワハラ兵庫県知事再選の裏にユーチューブの存在

【特集】ユーチューブ20年

パワハラ知事審判の選挙、ユーチューブの影響で加害者が被害者に

NHKなど既成のメディアを信じず陰謀論やフェイクニュースを盲信

 広告売り上げへの依存度が高く利用者の「目」をできるだけ長く引き留める形に設計されているユーチューブのアルゴリズムも、立花氏のそれらしい陰謀論に「翼」を付けた。立花氏は17日間の選挙運動期間、100以上のユーチューブ動画を掲載し、クリック数は1500万回に達した。ユーチューブは動画に挟まれた広告で売り上げを確保し、立花氏もユーチューブからの支払いでかなりの収入が得られる。別のユーチューバーも立花氏を追いかけ、彼の主張を共に広めた。日本のある政治ユーチューバーは毎日新聞に「陰謀論や極端な主張を過激な支持者たちは最後まで擁護するため、クリック単価がそれ以外の動画に比べて2-5倍は高くなる」「立花氏はユーチューブで200万-250万円は十分に稼ぐだろう」と説明した。

 選挙報道のルールが厳しい日本のメディアは選挙期間中、立花氏のように特定の候補者に対しては強い批判も擁護もできない。表向きは立花氏も知事選に立候補していたため、立花氏を批判する記事を掲載した場合、「斎藤候補や立花候補の対立候補を応援した」などと非難を受ける恐れがあるからだ。これとは対照的にユーチューブの世界では何を配信してもこれを防ぐ仕組みがない。兵庫県議会の丸尾牧議員は本紙の取材に「選挙関連の報道なので、既存メディアは全ての候補者の発言を同じ割合で紹介しなければならないが、その間にユーチューブの一方的で偏った主張はさらに広がっていく」と警鐘を鳴らした。

 最終的にはパワハラ疑惑の斎藤知事が再び兵庫県知事に当選した。読売新聞の出口調査によると、斎藤知事に投票した有権者の約90%が投票の際に最も参考にした情報源として「SNSと動画サイト」を挙げた。日本のNGO(非政府組織)ファクトチェックセンター編集長の古田大輔氏は「ユーチューブなどSNSの影響力拡大そのものが間違っているわけではないが、これを通じて選挙の際に虚偽や歪曲(わいきょく)された情報が広がるのは問題だ」「有権者に対する情報分別力教育、法律を含むルールの制定など複合的な対策を急ぐべきだ」と述べた。

 斎藤知事が当選した翌日、百条委員会の委員だった竹内英明議員が議員辞職し、それから数日後に自ら命を絶った。周辺では「立花氏があおったユーチューバーからの脅迫は問題が収まったあとも続き、自宅の外に出られない状況だった」と語る。立花氏の信奉者らは選挙期間中、竹内氏の自宅やオフィス周辺をうろつき、電話で暴言を吐くなどしていたという。

 竹内氏が自殺した翌日にも立花氏は「兵庫県警は犯罪容疑者として竹内氏を任意で聴取し、近く逮捕する予定だったとのうわさがあった」という陰謀論をユーチューブを通じて広めた。これを受け兵庫県警は異例にも会見を開き「明らかなうそがSNSで広がっているのは非常に遺憾」との立場を明確にした。立花氏は虚偽事実流布に対して法的・道義的に責任を取るどころか、今年7月に予定されている参議院選挙への出馬を先日発表した。ユーチューブチャンネルの登録者たちは警察の発表について「立花氏に対する圧力だ」として立花氏のために3100万円の激励金を集めたという。

成好哲(ソン・ホチョル)東京支局長、金東炫(キム・ドンヒョン)記者

【表】時系列で見る兵庫県知事選

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