尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領が韓国与党「国民の力」を離党した。国民の力の金文洙(キム・ムンス)大統領選候補が選挙戦で劣勢の続く理由の一つが尹前大統領問題だった。国民の力は尹前大統領への対応がどっちつかずで、また金文洙候補も「尹前大統領の判断を尊重すべきだ」との考えを示してきたため、伝統的な保守層は分裂し、中道層が反発する状況を国民の力は自ら招いてしまった。共に民主党が「内乱勢力」と批判しても何の反論もできない状況が続いていたのだ。
尹前大統領の去就問題についていつまでも解決できなかったため、大統領選候補が前面に出るべき選挙で「尹錫悦対李在明(イ・ジェミョン)」という構図が形成されてしまった。国民の力は内部分裂が深刻となり、しかも選挙対策も不十分で支持率まで下落したため、最終的に尹前大統領自ら離党する形で問題が決着した。尹前大統領離党後に国民の力の金容泰(キム・ヨンテ)非常対策委員長は「弾劾の大きな溝を乗り越え国民統合を実現したい」と述べ、金文洙候補は「党がさらに一つになり革新を成し遂げたい」と改めて意欲を示した。
ただ尹前大統領は離党はしたが、非常戒厳令や弾劾については謝罪していない。尹前大統領は「今回の選挙は全体主義独裁を阻止し、自由民主主義と法治主義を守る最後の機会だ」「金文洙候補を後押ししてほしい」と呼びかけている。突然の戒厳令で政権を譲り渡す愚を自ら招いた尹前大統領のこれらの発言については、支持者の間からも「理解できない」などの声が相次いでいる。
尹前大統領の離党は遅きに失したが、これをきっかけに国民の力は大々的な刷新と変化を推し進めねばならず、また戒厳勢力とは一線を画すという明確な意思表示が必要だ。尹前大統領の離党を受け、これまで選挙対策委員会に合流していなかった韓東勲(ハン・ドンフン)前代表は今週から自ら遊説を行うという。尹前大統領の離党を求めてきた安哲秀(アン・チョルス)議員は「これからは本当に一つになるべきだ」と呼びかけた。候補者一本化後も選挙支援を行っていない韓悳洙(ハン・ドクス)前首相も支援の約束を守らねばならない。
何よりも金文洙候補自ら戒厳令と弾劾について改めてはっきりと謝罪し、自らの考えを明確にした上で変化を約束すべきだ。これにより伝統的な保守層を結集させ、戒厳に反対した国民の多くに改めて支持を呼びかけることができるだろう。尹前大統領の離党は国民の力刷新の終わりではなく始まりにしなければならない。