4月30日午前8時、ソウル市松坡区風納洞のソウル峨山病院を訪れた。肝移植のため、4カ所ある手術室が同時に開かれた。生きている人の肝臓の一部を切除し、患者に移植する「生体肝移植」が同時に2カ所で行われたのだ。ドナーのための手術室と移植を受ける側の手術室はそれぞれ2カ所ずつ準備された。ドナー手術室では肝臓の一部を切除する手術が、移植を受ける側の手術室では健康な肝臓を移植するための準備が始まった。同日、11時間を超える手術の末、肝臓がんと肝硬変を患っていた40代の患者とアルコール性肝硬変で危険な状態にあった70代の患者が、それぞれのおいから肝臓の一部提供を受けた。
同日の手術は、ソウル峨山病院の8999回目、9000回目の肝移植手術となった。単一医療機関で9000回の肝移植を行ったのは、ソウル峨山病院が世界で初めてだ。ソウル峨山病院は「一つの医療機関で同時に複数の肝移植が行われるのは世界的にもなかなか類を見ない」とし「手術を分けてできるほど個別の医療スタッフの熟練度が高いほか、医療スタッフを支えるきめ細かなシステム運営も定着しているため、実現できたもの」と述べた。
ソウル峨山病院は1992年8月に初めて脳死患者の肝移植を行ったのを皮切りに、これまで生存者からの「生体肝移植」を7502回、脳機能が停止した脳死状態の患者からの肝移植を1498回それぞれ行ってきた。9000回目の手術は、最初の手術から32年8カ月にわたって積み重ねられた偉業となる。
これまでの肝移植で多くの人生が奇跡的に救われた。イ・ジウォンさん(31)は生後9カ月の乳児だった1994年12月、ソウル峨山病院で父親の肝臓のうち4分の1の移植を受けた。先天性胆道閉鎖症で肝臓が硬くなっていたためだ。韓国国内で初めて生体肝移植に成功した瞬間だった。イさんは手術後6カ月で退院し、約30年がたった今、立派な社会人として活躍している。イ・サンジュンさん(74)は92年10月、末期の肝硬変を患い、余命わずかとされたものの、同病院で脳死者の肝移植を受けた。死を目前に40歳の家長は、孫の誕生を見る喜びを味わうこととなった。イさんは韓国国内で肝移植を受けた生存者のうち長寿記録保持者となっている。
ソウル峨山病院の全体の肝移植生存率は98%(1年)、90%(3年)、89%(10年)を誇っている。韓国よりも肝移植で長い歴史を誇る米国ピッツバーグ・メディカルセンターとサンフランシスコ・カリフォルニア大学メディカルセンターの肝移植の1年間の生存率は平均92%だ。
ソウル峨山病院の肝移植・肝胆道外科のイ・スンギュ碩座(せきざ)教授=寄付金によって研究活動を行えるように大学の指定を受けた教授=は「肝移植9000回を達成できた原動力は患者」とし「執刀医だけでなく、複数の科、手術室、病棟、臓器移植センターなど数多くの医療スタッフが『一丸』となって患者の長期生存と生活の質を保障するために努力を注いだ結果」と述べた。
クァク・レゴン記者