弾劾政局の後、拙速に繰り広げられる今回の大統領選挙も混濁の極みだ。次期政権を誰が握っても、果たして政治的破局を避けることができるだろうか。韓国で政治的大混乱が起こるたびに、中国共産党は機敏にそれを体制宣伝に利用する。
中国の官営メディアに映った韓国政治は、無法が罷り通る衆愚政治と鋭い政治報復の連続だ。中国の学者は、韓国が米国式民主主義を真似して危機に陥ったと主張する。中国のネットユーザーは「韓国政界の泥沼の争いを楽しみながら、世界で最も危険な職業は韓国大統領だ」とあざ笑う。三権分立を批判し、一党独裁を称賛する中国共産党は、韓国が政治混乱で奈落の底に落ちることを望んでいる。
韓国式民主主義が危機に直面すれば、中国式の一党独裁の理念的基盤が強化されるという東アジアの国際情勢の皮肉だ。まさにそういう意味で、韓国大統領選は内政にとどまらず、世界レベルのドミノ効果を生む。緊迫した再編が進む国際情勢の中で、今回の韓国大統領選には全体主義勢力に対抗し、東アジア自由民主主義の最後の砦を守る全人類的意義がある。国内外のあらゆる状況を考慮すると、今回の大統領選の時代精神は政治革新と憲政確立だ。
無寛容と非妥協という泥仕合の政治形態を改めなければ、民主的憲政秩序が確立することはできない。民主的憲政秩序の確立なしには、韓国の民主主義は持続不可能だ。韓国民主主義の没落は、東アジア全域の政治的後退を招く。時には賢明な有権者の慎重な投票が、下からの政治革命を開始することもある。政治を革新し、憲政を確立しよう。
宋在倫(ソン・ジェユン)カナダ・マクマスター大教授(歴史学)