■中国の刀、米国の盾
2010年9月、尖閣諸島(中国名・釣魚島)で日本の巡視船が中国漁船を拿捕した。領有権紛争がある海域で中国漁船が操業したことを領海侵犯とみなし、日本は船長を拘束した。中国政府は強く抗議し、それまで磨いてきた刀を取り出した。まさにレアアースだ。中国は漁師の釈放を要求し、レアアースの日本への輸出を完全に断ち切った。レアアースの供給が途絶えると、日本はわずか3日で中国人漁船員を解放した。「レアアースの武器化」がどれほど効率的なのかを国際社会に劇的に示した事例だ。
北京はその後、戦略資源のサプライチェーンにおける優位を積極的に武器として活用した。2022年には中国国務院(中央政府)がレアアースおよびその他鉱物産業への外国人投資を禁止。2023年に実施した黒鉛、ガリウム、ゲルマニウムなどの戦略物資の禁輸措置は米中競争で中国が手に入れた切り札だった。
尻に火がついた米国は、対応策づくりに乗り出した。「鉱山から磁石まで(マイン・トゥー・マグネット)」戦略が代表的だ。戦略兵器の生産への支障を懸念した米国防総省は昨年、国家防衛産業戦略を通じ、2027年までに米国の国防に必要な資源を供給できるサプライチェーンを構築することを目標に投資を進めている。一時、環境問題と財政悪化で閉鎖された米カリフォルニア州マウンテンパス鉱山で産出したレアアースを加工し、永久磁石を自主生産するやり方だ。しかし、直ちに需要を満たすには力不足だ。
中国を除いて、米国単独または米国と同盟国だけで構成する安定的な鉱物サプライチェーンを整備するのは大変なことであり、しかも多額の費用がかかる。中国を除く国が堅固なサプライチェーンを構築するには10~15年以上はかかるとの見通しが示されている。技術の未来は中国の戦略資源に左右されるというわけだ。
寄稿=イ・ヒョンイク科学技術政策研究院副研究委員
整理=キム・ソンモ記者