北京や上海では5000万人民元(約10億円)以上の資産を持つ未婚者の婚活パーティーが盛況だ。コロナ禍の2021年に登場したこのいわゆる「5000万婚活パーティー」はいつしか年間200回以上も各地で開催されており、一種のイベントとして定着した。参加者は毎回30人以内に制限されており、費用も6000元(約12万円)とかなり高い。
主催する団体はこの婚活パーティーについて「(玉の輿〈こし〉などの)夢を実現する場所ではなく、家格が合う人たちのパーティーだ」と宣伝している。この「格」を見極める最も重要な条件は財産だ。男性参加者は不動産、所有する高級車、銀行や株式口座の残高などが厳しくチェックされ、女性は出身高校で家格が評価される。例えば北京四中高校、中国人民大学・北京大学・清華大学の付属高校出身者であれば裕福な家の娘として認められるという。
このような傾向は中国の婚活市場でかつて最高の新郎新婦候補とされた政府高官の子息や高級官僚の子息の評判が悪くなったことと無関係ではない。2012年の習近平政権発足時から続く反腐敗政策により「紅二代(革命家の家系)」「官二代(高級官僚の家系)」などとの結婚は富と成功への近道ではなく、逆に没落のリスクと見なされるようになった。
実際に中国では以前から「高級官僚は最も危険な職業」と認識されている。米中の関税戦争が激しくなる中、今月16日には広西チワン族自治区の藍天立主席(閣僚級)が中国の戦略物資であるレアアース密輸などに関係したなどの疑惑で突然摘発された。このように習近平政権発足後に摘発された次官級以上の官僚は外相や国防相などの要職を含め400人を超える。2023年にはすでに政界を引退した70代の元政府高官の孫娘が中国のSNS(交流サイト)で数十億円相当の資産を自慢し、これをきっかけに家全体が調査を受け没落した。中国のある大手企業の関係者は「かつては官二代を高額の給与を払って迎え入れたが、今は彼らのことを『時限爆弾』と見なす認識が強まっている」と語る。中国の有能な若者は政界への関心を持たなくなり、小さな土地での生活を目指す傾向が強まっている。
中国で目につくこの傾向は、政治が恐怖の対象となった時に若者たちの間で起こる現象を示している。若い世代が顔を背け「新しい血」が入らなくなれば、政治は少数の権力者による利益ゲームとして固定化する悪循環に必ず陥る。大統領選挙を目前に控えた韓国の政界でも、未来のビジョンではなく敵対心と報復を暗示する言葉がより多く聞こえてくる。自分とは違った意見を受け入れるとか、傾聴する態度を示すこともない。政治を争いの場として固定化させないための突破口を見いだせなければ、健全で有能な若い世代は政治の道に進もうとはしないだろう。
北京=李伐飡(イ・ボルチャン)特派員