韓国大統領府は憲法裁判官候補者としてソウル高裁の呉栄俊(オ・ヨンジュン)部長判事、同じくソウル高裁の魏光夏(ウィ・グァンハ)判事、元判事のイ・スンヨプ弁護士を検討していることが分かった。うちイ・スンヨプ弁護士は李在明(イ・ジェミョン)大統領の弁護人であり、選挙法違反事件、偽証教唆事件、北朝鮮への不法送金事件などの弁護を担当したため、誰よりも中立であるべき憲法裁判官としてはあまりに不適切だ。
【写真】法廷を出てメディアの質問に答えるイ・スンヨプ弁護士(2022年)
波紋の広がりを受け韓国大統領室は「大統領が関連する事件を担当した方々は公職に就いてはならないという指摘は理解できない」とコメントした。確かに大統領の弁護人は裁判官になれないという法律はない。しかし権力をけん制する機能を持つ憲法裁判所の裁判を大統領の弁護人が担当した場合、誰がその裁判を公正と信じるだろうか。「弁護士への支払いを公職で弁済した」といった一部の批判も間違いとは言えない。
しかも共に民主党は大統領候補者が当選すれば裁判を停止する法案をすでに常任委員会で可決させた。李在明大統領関連事件を担当している裁判所の裁判部が今後裁判を行った場合、共に民主党は即座にこの法案を成立させるだろう。そうなればこの裁判中止法が違憲かどうかが憲法裁判所で争われることになる。もしイ・スンヨプ弁護士が裁判官となり、この事件を担当するようになれば間違いなく利益相反問題が浮上するだろう。
これは憲法裁判所のためにも望ましいことではない。憲法裁判官が憲法を守るのではなく、政権と政党の利益を守る小間使いのようになったという批判は過去にもあった。文在寅(ムン・ジェイン)政権当時の憲法裁判官9人のうち5人は進歩・革新系の「ウリ法研究会」「国際人権法研究会」「民主社会のための弁護士会(民弁)」出身者だった。共に民主党はつい先日も民主党と同じ考えを持つ馬恩赫(マ・ウンヒョク)判事を裁判官候補とした。李在明大統領は在任中、憲法裁判官9人のうち5人を指名する予定だ。ところが最初に自らの弁護人を裁判官に指名した場合、政権発足直後から憲法裁判所の中立性問題を自ら引き起こす結果になるだろう。
イ・スンヨプ弁護士は法曹界ではその実力が評価されているという。しかしたとえそうだとしても、状況によって就任すべきでない地位もある。最も公正かつ中立であるべき憲法裁判官が正にそうだ。李在明大統領はイ・スンヨプ弁護士の指名検討を直ちにやめるべきだ。