北朝鮮の外交官だった私が脱北した理由【寄稿】

 2011年9月、駐キューバ北朝鮮大使館3等書記官(対外職級1等書記官)に任命され、任期の4年4カ月間にわたって武器の不法輸送を行ったが、パナマに抑留された北朝鮮船舶「清川江号」事件を担当して勝訴する輝かしい成果も挙げたことで、「金正恩(キム・ジョンウン)表彰状」も受賞した。帰国後は外務省1局(政策総合局)課長に続き、アフリカ・アラブ・ラテンアメリカ局の副局長に任命され、北朝鮮の対ラテンアメリカ外交を総括した。

 この間、キューバの大統領や副大統領の訪朝を現場で指揮し、金正恩氏にも会うことができた。金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員会委員長、崔竜海(チェ・リョンヘ)労働党組織秘書、朴泰成(パク・テソン)労働党科学教育秘書(当時)、李容浩(リ・ヨンホ)北朝鮮外相(当時)ら高官の海外訪問も主管し、同行した。2019年3月、私は駐キューバ北朝鮮大使館政治参事兼党細胞秘書(北朝鮮の最下位党組織の責任者)に任命され、23年11月の脱北直前までの4年8カ月にわたり、韓国とキューバの国交正常化の阻止、北朝鮮とキューバ血盟の維持・強化など、さまざまな業務を担当。23年に半生以上を過ごした北朝鮮を離れることを決め、辛うじて脱北に成功した。

 私が脱北した理由はいろいろあるが、最も大きな理由は不平等な北朝鮮社会に対する失望と未来に対する悲観からだ。北朝鮮に残っていれば昇進の一途をたどることもできたが、いつどんな理由で不利益を被るか分からない綱渡りの人生をこれ以上生きたくはなかった。

 大韓民国に来て1年間生活してみて残念に思うことは、もっと早く自由を選択していたらどんなに良かったことだろうかということだ。それでも北朝鮮に残った私の同僚と知人のことを思うと、私は恵まれていると思う。彼らにも人間の尊厳と自由、民主主義が保障された立派な社会で幸せに暮らせるその日が一刻も早く訪れるように、私の小さな努力でも加えたい思いだ。

 「23年以上、北朝鮮の外交官として勤務しながら得た経験を基に、コラムを書こうと思う。北朝鮮が行う措置の内幕と国際社会における北朝鮮に対する評価などについて、正確な実状を知らせることに焦点を置くつもりだ。また、過去に北朝鮮で発生したさまざまな事件の背景や真実などについても、修正していく役割を果たそうと思う。

リ・イルギュ国家安保戦略研究院責任研究委員・元キューバ駐在北朝鮮大使館政治参事

【写真】駆逐艦の進水式で父・金正恩総書記と腕組みする娘のキム・ジュエ氏

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  • ▲国家安保戦略研究院のリ・イルギュ責任研究委員・元駐キューバ北朝鮮大使館政治参事

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