8年前、「朴槿恵(パク・クンヘ)罷免」のおかげで就任した文在寅大統領は、前任者を消去することに全力を尽くしたことで、左派陣営内の「反日親中」という理念的慣性を超えることができなかった。政権が発足するやいなや、韓日「慰安婦」合意を暴き出し、事実上破棄させた。日本の輸出規制措置に対して米国が支持してきた軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の終了を宣言し、安保協力まで揺さぶった。これに対し、トランプ大統領が日本の安倍晋三首相の側に傾き、韓米日3カ国の協力体制は瓦解の危機を迎えた。
韓日間の葛藤が深まった状況で、文在寅政権は中国に頼ろうとしたものの、帰ってきたのは屈辱的なものだった。2017年の国賓訪問当時、韓中首脳会談は形式的であり、「一人飯外交」という批判の声が上がった。同行した韓国人記者らが中国の警護員に暴行される事件まで発生した。THAAD(高高度防衛ミサイル)の追加配備、米国主導のミサイル防衛(MD)への参加、韓米日軍事同盟を全て拒否する「THAAD3不」政策は、「低姿勢外交」の標本として韓国国民のプライドを傷つけただけでなく、米国の信頼をも失う結果につながった。これに対北朝鮮屈従外交論議が重なり、文在寅政権は国政運営の原動力を失ってしまった。
6月4日に就任した李大統領が、文在寅政権を反面教師として大統領選挙期間中に強調した安定的な外交路線を維持するならば、民主党代表時代の外交安保関連論議は再現されないことだろう。大統領就任演説の「堅固な韓米同盟を土台に韓米日協力を固め、周辺国との関係も国益と実用の観点でアプローチする」という言及通りに実行するなら、李大統領に投票しなかった国民が心配することはない。李大統領が過去の感情的修辞や理念的偏向から抜け出し、外交・安保の新しいパラダイムを確立することで、「成功した大統領」として記憶されることを全ての国民が願っている。
李河遠(イ・ハウォン)外交安保エディター