李在明大統領が対北ビラ散布防止と厳罰化を指示、一体何を根拠に処分するというのか【6月16日付社説】

 ある民間団体が14日に北朝鮮に向けてビラを飛ばすや、李在明(イ・ジェミョン)大統領は北朝鮮へのビラ散布防止と事後処罰対策を指示した。与党・共に民主党も「関係当局は厳重に処分せよ」と要求した。韓国統一部(省に相当)は16日に会議を開き、北朝鮮へのビラ散布防止や事後処罰などの対策について話し合う予定だ。警察は北朝鮮へのビラ散布を航空安全法違反容疑で捜査する方針だと明らかにした。

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 李在明政権発足以降、北朝鮮へのビラに対する取り締まりと処罰は予定されていたことだった。李大統領は今月11日に北朝鮮向け宣伝放送を中止させ、13日には南北接境(境界)地域の住民に会い、「(北朝鮮へのビラに使われる)ヘリウムガスの使用はガス管理法違反であり、現行犯逮捕の対象だ。違法行為に対しては強硬に対応する」と述べた。李大統領は京畿道知事時代の2020年に北朝鮮へのビラ散布について、「可能な限りあらゆる方法を動員して事前に遮断する」と言っていた。災難(災害)安全管理法により一部地域を「危険区域」に指定して出入り禁止とするほか、高圧ガス法・廃棄物管理法・海洋環境管理法など7つの法律を取り締まりの根拠として挙げた。政府は今回も同じ法律で取り締まりに着手するものと予想される。

 しかし、北朝鮮へのビラ散布に対する取り締まりと処罰は憲法上保障された表現の自由と真っ向からぶつかる。文在寅(ムン・ジェイン)政権が北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記の実妹・金与正(キム・ヨジョン)氏の下命で作った「北朝鮮へのビラ散布禁止法」は国際社会で人権侵害だと批判され、韓国憲法裁判所も「表現の自由の過度な制限」だとして違憲決定を下した。政府がどのような法的根拠を提示しても、北朝鮮へのビラを処罰するのは憲法に反し、便法に過ぎない。

 北朝鮮へのビラ散布が北朝鮮住民に金正恩体制の実情を伝える役割を果たしてきたことは明らかだが、北朝鮮に挑発行為の口実を提供してきた面があるのもまた事実だ。北朝鮮は2014年に北朝鮮へのビラが入った風船に対して射撃を行い、そのビラへの対抗だとして汚物風船を韓国に向けて飛ばした。北朝鮮を不必要に刺激せず、南北接境地域の住民に迷惑をかけない方法で、北朝鮮住民に真実を伝える別の手段も用意すべき時が来た。

 北朝鮮住民を対象にした情報送出はビラのほかにもラジオやテレビ放送など、より効果的な手段でも可能だ。政府は憲法に反する北朝鮮へのビラ散布の処罰ではなく、民間団体と北朝鮮へのビラ散布以外の情報送出の代案を協議すべきだ。根拠もなく軍事作戦のように行政力をもって取り締まり、民間団体は追われるようにビラを散布することこそ、北朝鮮の思うつぼだ。

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  • ▲15日、京畿道坡州市の臨津閣近くにある遊園地「平和ランド」前。「北朝鮮へのビラ散布地域危険区域設定および行為禁止措置」と書かれた横断幕がある。写真=news 1

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