韓国大法院(最高裁判所に相当)で判決が確定した李華泳(イ・ファヨン)元京畿道平和副知事による北朝鮮への不法送金事件について、与党・共に民主党の一部議員が「捏造(ねつぞう)された」と主張し波紋が広がっている。曺国(チョ・グク)元韓国法務部(省に相当)長官についても「標的捜査の被害者」として「赦免すべきだ」と主張する声が上がっている。
共に民主党で法律委員長を務める朴均沢(パク・キュンテク)議員は16日「李華泳元京畿道平和副知事による北朝鮮への不法送金事件は捏造されたと信じている」と発言した。李華泳元副知事は今月5日、下着大手サンバンウルによる北朝鮮への不法送金事件により大法院で懲役7年8カ月の実刑が確定したが、朴均沢議員はこの確定判決も捏造と主張している。朴均沢議員のこの主張は政治的な意図を持つ事実の歪曲(わいきょく)と言わざるを得ない。
朴均沢議員は「北朝鮮に一部送金していないことを、賭博資金として海外で使用したものを北朝鮮への送金などとでっち上げ、その裏で李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事(当時)が関与したなどとして事件が捏造された」と訴えている。当事者らの関係悪化により供述が変わったとの疑惑も指摘した。しかし李在明知事の訪朝費用と京畿道による北朝鮮スマートファーム事業費としてサンバンウルが800万ドル(約12億円)を肩代わりする際、李華泳元副知事はこれに関与した容疑で一審、二審、そして大法院の全てで有罪が宣告された。サンバンウルの法人用クレジットカードを使う形で数億ウォン(数千万円)の賄賂と政治資金を受け取った容疑も全て大法院で有罪となった。事実としての明らかな証拠がなければ有罪判決は出なかったはずだ。
しかも李華泳元副知事を除くサンバンウルの元代表や役員ら関係者の供述は全て一致している。李華泳元副知事も当初は北朝鮮への送金について「李在明大統領に報告した」と供述したが、後にその供述を否定した。政権が変わり李在明大統領が就任すると同時に、明らかな証拠に基づいて確定した大法院判決までひっくり返そうと考えているのだ。
李華泳元副知事は「裁判所は検察と同じ側に立ち捏造された証拠で有罪を宣告した」と主張しており、同時に自らの赦免も求めている。裁判所と検察が裏で手を組んでいるなら、李在明大統領に無罪を宣告し、拘束令状を棄却した判事らについてはどう説明するのか。政治家が司法に圧力をかける悪癖はもう終わりにすべきだ。
与党などからは曺国元長官や宋永吉(ソン・ヨンギル)元共に民主党代表についても「司法による弾圧の被害者」と主張する声が上がっている。娘の不正入試などで大法院で懲役2年の実刑が確定した曺国元長官、また不法政治資金による贈収賄容疑で懲役2年の実刑が確定した宋永吉元代表のいずれも「検察による標的捜査の犠牲者」というのが彼らの主張だ。しかしこれらの判決も疑問の余地がない事実関係と証拠に基づいた判決だった。
共に民主党は2021年、裁判所が自分たちに不利な判決を下した際に担当判事を弾劾訴追した。弾劾の理由もそのプロセスもずさんなものだったため、最終的に憲法裁判所で却下された。共に民主党はすでに政権を握ったのであるから、この種の事実関係歪曲や何でもありの行動はもう卒業すべきだ。