李在明政権は戦時作戦統制権移管後に「米国からの請求書」に耐えられるのか【コラム】

 ワシントン特派員だった2006年、戦時作戦統制権移管は韓米間の大きな関心事だった。当時米国防総省韓国課長だったマイケル・フィネガン中佐とは親しい関係を築くことができた。妻が韓国人だったので韓国への愛着がかなり強かった人物だ。ある日の夕刻にバージニア州アナンデールの韓国レストランで二人で食事をした。フィネガン氏は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権発足後、韓国が戦時作戦統制権の移管を求めてくると予想し、1年かけて周到に準備してきたと明かした。総責任者はリチャード・ローレス国防総省副次官(当時)で、この問題は当時のブッシュ大統領にも報告されていたという。

【表】韓半島有事に支援を行う7カ所の在日米軍基地

 フィネガン氏によると、韓国が要求すると同時に米国は「今すぐ(戦時作戦統制権を)持っていけ」と回答し、同時に請求書を突き付けてきたという。戦時作戦統制権を運用する当事者が支払うべき費用だった。北朝鮮を24時間監視する人工衛星の費用、通信傍受の費用、その他軍事動向や戦略兵器を運用する費用など、フィネガン氏が提示した費用は天文学的な額だった。トランプ大統領は韓国に対し「毎年100億ドル(約1兆5000億円)支払うべきだ」と求めているが、その額と大きな違いはなかった。

 フィネガン氏によると、ローレス副次官は当時の韓国政府関係者に1枚の地図を提示したという。北朝鮮政権崩壊などの有事に中国人民解放軍が清津江など国境から60キロ以内に入るという中国の戦略計画書だった。北朝鮮政権が崩壊すれば大量の難民が発生するため、北朝鮮に軍隊を送り国境を封鎖するという口実だ。韓国政府はその文書を見て非常に戸惑ったという。韓国と北朝鮮が統一した場合、まずは中にいる中国軍をいかに撤収させるかという問題が突き付けられたからだ。ローレス副次官は「戦時作戦統制権を運用するには周辺国に関する情報も確保しなければならない」とも指摘した。その後、戦時作戦統制権移管を主張する声は保守・進歩(革新)に関係なく尻すぼみになった。問題は金だった。戦時作戦統制権を手にした後、天文学的な額を支払って戦略兵器を定期的に借り受けるよりも、そのまま放置した方が良いのは明らかだった。

 第2次トランプ政権で米国防総省次官に任命されたエルブリッジ・コルビー氏は昨年、本紙が主催したアジアン・リーダーシップ・カンファレンス(ALC)で記者の取材に「在韓米軍を柔軟に運用すべき時代になった」「在韓米軍存在の大義名分は中国抑止だ」「米国の核の傘の下で韓国は北朝鮮を十分に抑止できる」などと発言した。このような認識を持つコルビー次官は韓国の防衛に限定されている今の在韓米軍の役割を必ず変更させるだろう。これも最も少ない額で中国を抑止するための方策だ。

 第1次トランプ政権当時、米国のある将校を取材したことがある。この将校は「米軍は韓国から撤収しないだろう」と断言した。まず2万8000人が撤収した場合、彼らを収容する基地を米国などに建設しなければならないが、その費用だけで10兆ウォン(約1兆1000億円)以上かかると言った。しかも世界で北京に最も近い米軍基地は韓国にある。韓国から米軍戦闘機が離陸すれば、理屈の上ではわずか10分で北京が射程圏に入る。そのため韓国からの撤収は米国の国益に反すると言ったのだ。

 だとすれば今のトランプ政権で米軍撤収はないだろうが、費用を削減するため柔軟性を持たせた循環配置への変更は貫徹させるだろう。韓国大統領府の魏聖洛(ウィ・ソンラク)国家安全保障室長は13日、戦時作戦統制権移管について「長期的な懸案」としたが「今は進んでいない」と明言した。在韓米軍見直しを巡る実務協議の開催が波紋を引き起こしたので一歩引いたと言えるだろう。幸いなことだ。韓国が独自の情報能力を持つまで急ぐべきではない。

崔宇晳(チェ・ウソク)未来企画部長

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  • ▲2007年にソウル市内の韓国国防部(省に相当)で韓米安保政策構想会議が開催された。写真は会議前に握手する米国防総省のローレス・アジア太平洋担当副次官(左)と韓国国防部の全済国(チョン・ジェグク)政策広報本部長。この席で韓米両国は戦時作戦統制権移管問題について意見交換した。
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