「労働組合」を口にするだけで処刑される北朝鮮と連帯してきた前科5犯の元民主労総委員長が雇用労働相候補に【7月17日付社説】

 北朝鮮の永久政権政党の名称は「朝鮮労働党」だ。党の名称に「労働」が入っているが、北朝鮮の金(キム)氏政権は労働者を徹底して弾圧している。北朝鮮ではあらゆる労働が事実上の無報酬、つまり強制労働であり、その労働の過酷さは想像を超えるものだ。人間は人間ではなく労働の機械であり、これに反旗を翻せば反体制容疑で間違いなく処刑される。韓国のような労働運動など夢のまた夢だ。

 ところが韓国の全国民主労働組合総連盟(民主労総)は北朝鮮に通常の労働運動が存在するかのように訴え、北朝鮮と「連帯」を続けてきた。組織の中にはスパイもいた。その民主労総の委員長だった金栄訓(キム・ヨンフン)氏が雇用労働部(省に相当)長官に指名された。金栄訓候補者は2011年に金正日(キム・ジョンイル)総書記を弔問したいとして訪朝を申請したが、この事実を国会人事聴聞会で指摘されると「南北の緊張緩和にプラスになると判断した」と答弁した。「哨戒艦『天安』と延坪島の将兵を殺害したのは金正日ではないのか」との指摘に金栄訓候補者は「戦争の最も大きな被害者は労働者たちだ」と的外れな答弁を行った。韓国軍将兵を殺害した金正日総書記の弔問はしたいようだが、「金正日総書記が殺害した韓国軍将兵には弔問したのか」との問いに金栄訓候補者は「していない」と答えた。

 金栄訓候補者は金正恩(キム・ジョンウン)総書記が行った延坪島砲撃から1カ月後の集会で「李明博(イ・ミョンバク)政権の対北朝鮮政策が砲弾となり、われわれに飛んできた」と発言し、「北朝鮮ではなく韓国政府の責任」と主張したが、もし自分の息子が北朝鮮の砲弾で死亡していれば、金栄訓候補者はおそらく全く違った態度を示しただろう。他人の子供が死んだ時には殺人犯を擁護したのだ。哨戒艦「天安」爆沈と延坪島砲撃の加害者を問いただす質問に金栄訓候補者は自ら「北朝鮮」とは明言しなかった。それでも長官にはなりたいのか「韓国の自作自演」といった陰謀論には言及せず、「(北朝鮮の仕業とする)韓国政府の発表を信頼する」と答えた。

 金栄訓候補者は「不法スト保障法」とも呼ばれる「黄色い封筒法」について「対話促進法だ」として直ちに成立させる考えを明確にした。この法律が成立すれば、数百の下請け労働組合が元請け事業者に交渉を求めた時に工場などで大きな混乱が起こる恐れがある。金栄訓候補者は鉄道労組委員長だった当時、不法ストによりKORAIL(韓国鉄道公社)に135億ウォン(現在のレートで約14億4000万円、以下同じ)の損害をもたらしたとして1000万ウォン(約110万円)の罰金が宣告された。また大法院(最高裁判所に相当)判決により鉄道労組はKORAILに70億ウォン(約7億5000万円)の賠償を行った。

 今韓国において労働問題の最も大きな課題は正社員と非正規社員の格差解消と、労働改革を通じて企業の競争力を高めることだ。そのためには労使がバランスの取れた考え方と国際的な観点を持たねばならないし、時には組合側にも問題点を指摘しなければならない。ところが金栄訓候補者が示したその考えは古くさい「従北」と民主労総に染まった認識だけだった。

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  • ▲思いにふける金栄訓(キム・ヨンフン)元民主労総委員長

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