■THAAD配備と韓中関係の冷え込み
朴大統領は、こうした出来事に直面した後、韓中関係よりも韓米同盟をさらに強化する方向へと外交路線を転換します。韓国政府は2016年7月8日、米国との協議を通して高高度防衛ミサイル(THAAD)配備を電撃発表しました。
この決定は中国の強い反発を呼び、限韓令(韓流禁止令)、観光制限、ロッテ系列企業への撤収圧力など実質的な経済報復へとつながりました。それでも朴大統領は同年8月、「国民の生命と国家の安全を守ることに妥協はない」と宣言し、THAAD配備を中断するつもりはないという立場を明らかにしました。
2016年7月のTHAAD配備は、オバマ政権が在韓米軍を保護するためにこれ以上遅らせることはできないと要請してきたことであって、韓中関係が及ぼした影響は大きくなかったという指摘もあります。韓国政府の中心的な関係者は「THAADは当時の韓米関係の主要事案で、韓国側が配備を遅らせ続けることはできないものだった。朴大統領と習主席の関係が友好的であっても実行は避けられなかった」と語りました。ですが、16年1月の北朝鮮核危機のときに朴大統領と習主席の電話会談が実現して良い関係が続いていたら、中国を説得しようとする努力が続き、配備時期の調整など別の形で事態が展開していただろう、という分析も少なくありません。
■「今は2015年ではない」
朴大統領の戦勝節出席は、結果的に「失敗した外交」でしたが、やってみる価値はあったという評価も行われました。少なくとも、当時は米中間の戦略的競争が今ほど先鋭化しておらず、朴大統領は韓米同盟に対する確固たる意志を基に韓中関係改善を試みたからです。
だとしたら、今はどうでしょうか? 大多数の外交・安全保障専門家らは「今は状況が違う」と語ります。米中覇権競争が露骨になっている状況で李在明大統領が中国の戦勝節行事に出席したら、それが引き起こすであろう外交的波紋はかつてよりもずっと大きなものになるかもしれません。しかも李大統領は、米国を「占領国」とさげすんだ前歴、そして駐韓中国大使館での低姿勢外交などにより、トランプ政権内の一部で不信を持たれています。
こうした状況認識のほかにも、中国が演出した舞台に「助演俳優」として上がることと韓国が危機的な状況で手を取り合うことは別個の事案である―という教訓を、大統領室は10年前の戦勝節問題から学ばねばならないように思います。
李河遠(イ・ハウォン)外交安保エディター
チョソン・ドットコム/朝鮮日報日本語版