1979年、夏の甲子園球場では、高校野球の歴史に長く残る延長18回の死闘が繰り広げられた。ある1塁手は、力なく飛んできたファウルフライを落球してしまい、一度もホームランを打ったことのなかった打者が、同点ホームランを打った。1球が人生を変えてしまうことがあり得るのだろうか。
1970-80年代に活躍したスポーツノンフィクション作家が、野球・ボクシング・漕艇などさまざまな種目の選手を取材した。名門球団に入団したものの背番号94を付けることになった打撃投手、ある日突然「オリンピックの金メダルを取りたい」と決心した大学生など、スポーツ漫画の主人公のような人物のロマンあふれる奮闘記を盛り込んだ。
スポーツにさほど関心がなくても、洞察力のある流麗な文章を通して、この世界の美しさを垣間見ることができる。例えば著者は、憂鬱なある日、競技場に向かう理由をこのように説明する。「私は青春を使い果たした世界にいて、彼らはまだ青春を使っていない世界にいる。(中略)要するに私は、自らを太陽でからからに干からびさせる必要があると感じていたらしい」 じめじめした湿っぽい日が続いているこのごろ、自分を太陽でからからに干からびさせたい人々にお勧めする。392ページ、1万8000ウォン(約1910円)
ペク・スジン記者