内乱特別検察官が申請していた金容大(キム・ヨンデ)韓国軍ドローン作戦司令官の拘束令状を裁判所が棄却した。特別検察官が令状を請求した理由は実は平壌への無人機投入作戦に伴う枝葉末節的な問題ばかりで、外患や内乱とはほぼ関係がない。例えば作戦実行の事実を隠すため虚偽の訓練日誌を作成したことや、平壌で墜落した無人機が韓国で墜落したと捏造(ねつぞう)した容疑、また無人機浸透関連の文言を削除し、ビラの容器を廃棄した容疑などだ。金容大司令官も一連の事実は認めているという。しかしこれらが北朝鮮によるソウルへのドローン挑発に対する対抗措置であれば、作戦は当然極秘に進めねばならない。特別検察官はそのような特殊性をあえて考慮せず、無条件に犯罪に仕立て上げたかったのではないか。
【汚物風船】導爆線を巻き付けてタイマーってそれもう武器じゃないの?
特別検察官は「無人機による平壌浸透などの方法で北朝鮮に攻撃をさせ、これを戒厳令の大義名分にしようとした容疑」を証明したかったようだ。特別検察官は一時「外患誘致罪」として捜査を進めようとしたが、これは北朝鮮と共謀したとは言えないため最初から成立しない。そのため今度は「一般利敵罪」を主張しているが、無人機の平壌浸透が北朝鮮を有利な状況にしたかも明確ではない。
しかも特別検察官は金容大司令官を「外患誘致」「一般利敵」ではなく公文書偽造や職権乱用などで身柄拘束しようとした。これも納得し難いが、その過程で軍事上の観点から極秘にすべきドローン司令部による対北朝鮮無人機作戦の詳細な内容が公開された。これは特別検察官が任命された目的から明らかに逸脱している。
特別検察官は韓国軍のドローン作戦を停戦協定違反と主張しているが、北朝鮮は汚物風船を昨年だけで5751回も韓国に飛ばすなど、停戦協定違反はもはや日常茶飯事になっている。2022年には北朝鮮無人機が韓国大統領府の位置する竜山にまで飛来した。これに韓国軍が対抗措置を取るのは当然だ。手続き上の問題があったかは分からないが、少なくともこれまで明らかになった金容大司令官の容疑はこの定められた範囲を逸脱するものではない。
「NLL(北方限界線)北朝鮮攻撃誘導」などノ・サンウォン元情報司令官の手帳の内容のように疑わしい部分も確かにあるため、現時点でどちらが真実かは分からない。特別検察官は検察が特殊捜査と称してよく行う手法、すなわち一つの方法を定め、容疑をその方向に持っていく捜査を行っている。しかし本来であれば全ての可能性を念頭に置いた上で証拠を確保するのが正しい方法だ。たとえ捜査が壁にぶつかったとしても、安全保障の観点で必要な北朝鮮に対する軍事作戦を今回のように暴露し、これを公表するのは最初から特別検察官の目的から外れている。国の安全保障問題をこのように軽々しく扱う国などない。