尹錫悦前大統領の命令に従っただけなのに…韓国軍・警察・警護処幹部20人超が内乱捜査・裁判中、軍の指揮系統は焦土化

捜査に7カ月間沈黙していた尹・前大統領
金建希夫人が出頭通知を受けるや声明文

 7月21日に尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領が自ら声明を出して「12・3非常戒厳」に関与した軍人や公職者に対する特別検察官(特検)の捜査を批判したことを巡り、論争が続いている。政界や法曹界では「部下が心配だったのなら早い段階で立場を表明すべきではなかったか」「金建希(キム・ゴンヒ)夫人の召喚通知の当日に立場を表明するというのでは真正性が感じられない」などの否定的な反応が多数だった。一方、尹・前大統領の支持者の間では「特検の捜査はやり過ぎ」などの意見もあった。これについて、内乱特別検察官は22日「論駁(ろんばく)する価値はない」とコメントした。

【表】捜査・裁判を受けている韓国軍・警察・警護処の主要人物

 尹・前大統領は21日、「上級者の正当な命令に従っていた多くの軍人や公職者が特検や法廷に呼び出され、苦しい思いをしている。私に対する政治的弾圧にとどまらず、罪なき人々まで苦痛を受けている」として「生涯懸けて国家と国民のために献身した人々の名誉を汚し、彼らの生き方を毀損(きそん)する不当な弾圧を直ちに中止すべき」と主張した。特検の捜査が始まった後、初めて公式に立場を表明したのだ。

 非常戒厳後からこれまで7カ月間、韓国軍・警察、警護処の職員など公務員数十人が捜査や裁判を受けるなど、苦境に直面した。とりわけ韓国軍は、主な指揮官が次々と身柄を拘束されるなど、指揮系統が焦土化した。戒厳司令官に任命された朴安洙(パク・アンス)陸軍参謀総長をはじめ、国会封鎖に関与した郭種根(クァク・チョングン)前特殊戦司令官、李鎮遇(イ・ジンウ)前首都防衛司令官、逮捕チームの運用に関与した呂寅兄(ヨ・インヒョン)前防諜(ぼうちょう)司令官、選挙管理委員会に部隊を展開させたムン・サンホ前情報司令官などが次々と身柄を拘束され、裁判を受けている。これらの軍人は尹・前大統領や金竜顕(キム・ヨンヒョン)前国防相などの指示を受けて非常戒厳に加担した。

 ほかにも多数の将官や領官(佐官に相当)クラスの将校が軍検察や高位公職者犯罪捜査処(公捜処)などに召喚されて取り調べを受け、在宅のまま裁判にかけられている。最近は、金容大(キム・ヨンデ)ドローン作戦司令官が「平壌無人機侵入」疑惑で内乱特検の捜査を受けている。これまでに起訴された現役軍人は12人だが、内乱特検が現場指揮官に対する捜査を続けており、起訴人数がさらに増えることもあり得る。将官の階級章に付いている「星」の数を合わせると、19個の「星」が落ちていった。

 起訴された軍人たちは現在、「起訴休職」状態だ。この期間は通常の給与の50%だけが支給され、刑が確定するまで他の補職も受けられない。また、内乱容疑で禁固以上の刑が確定したら、軍人年金が剥奪され、不名誉除隊措置も付いてくる。起訴休職中のある将官の弁護人は「大多数の軍人は非常戒厳当日に上官の命令に従っただけなのに、生涯積み上げてきた名誉と自負が崩れ、精神的に苦しんでいる」と述べた。

■警察・警護処幹部も「内乱の共犯」

 警察幹部も非常戒厳事態で起訴された。戒厳当日に三清洞のセーフハウス(大統領の秘密施設)で尹・前大統領から国会封鎖命令を伝えられた趙志浩(チョ・ジホ)韓国警察庁長と金峰植(キム・ボンシク)前ソウル警察庁長は、今年1月に内乱重要任務従事の容疑で勾留起訴された。なお、趙庁長は勾留直後に血液がんが悪化してもいる。

 今年1月に公捜処が尹・前大統領の逮捕状を執行しようとした際にこれを阻止した大統領警護処の幹部も、長期間にわたって捜査を受けている。朴鍾俊(パク・チョンジュン)前警護処長と金成勲(キム・ソンフン)前警護処次長、イ・グァンウ前警護本部長、イ・ジンハ前警備安全本部長などは数回にわたり、警察と内乱特検に呼び出された。こちらもまた「国軍統帥権者の安全だけを考えろ」という尹・前大統領の指示に従った人々だ。

 李在明(イ・ジェミョン)大統領は就任直後、警護処の本部長5人全員と部長・課長級幹部に対する待機発令措置を取った。警護処は最近、金・前次長を罷免し、イ・グァンウ前本部長を解任した。警察・警護処の公務員らも、やはり裁判中は待機発令の状態だ。この期間の月給は通常の30%から50%のみが支給され、刑が確定するまで退職もできない。内乱容疑で禁固以上の刑が確定したら公務員年金は剥奪される。

 声明発表の背景について、尹・前大統領側は「かねてより尹・前大統領は『なぜ部下たちまで苦しめるのか』という思いを抱いていた」「軍人たちが次々と呼び出される状況にもどかしさを感じ、獄中で自ら草案を作り、弁護人と相談した末に発表したもの」と伝えた。

兪鍾軒(ユ・ジョンホン)記者、オ・ユジン記者、梁仁星 (ヤン・インソン)記者

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