「私を連れ帰ってくれ」 ダム湖で作業中に幻聴聞いた元救助隊員、水深30メートルの湖底でミイラ化した遺体発見 15年前失踪の男性と判明 /安東

 ペク氏と遺体で発見された男性との縁は今回だけではない。ペクさんは2010年8月、男性が安東ダムで行方不明になった当時、警察・消防以外の民間人として、行方不明者の捜索に1カ月にわたって加わった。遺体で見つかった男性の娘は「15年間待ち続けた父親が見つかったと聞き、涙を流した」と述べた。葬儀が終了後にペクさんに直接会って謝意を伝える意向だ。

 ペクさんは2012年に非営利の民間団体として水難救助隊を創設。30人余りの潜水士を擁し、溺れた人を助けたり、行方不明者の遺体を引き揚げたりした事例は数百件に及ぶ。ペクさんは昨年まで手弁当で社団法人の慶北水難救助隊を昨年まで運営してきた。現在は水上安全教育の講師を務めている。

■15年の水中で遺体が損傷しなかった理由

 男性の遺体が発見された場所は、水深30メートルで泥が深く、水流もほとんどない。水温は冷蔵室に近い摂氏6度だった。専門家によると、周辺環境によっては遺体が水中で腐敗せず、15年間完全な状態を保つ可能性もあるという。

 法医学者は今回発見された遺体について、遺体がミイラのようになる「死蝋(しろう)現象」とみている。「永久死体」とも呼ばれる。

 ソウル大医学部のユ・ソンホ法医学教室教授は「遺体が水中で泥や密閉された空間で低温状態で埋まり、空気との接触もなければ、ろうのように変化し、腐敗せずに形態を維持することもある」と話した。

 男性が行方不明になったのは、2010年8月17日のことだ。同日午前、安東ダムの船着場近くの駐車場で男性の乗用車が発見された。近くの船着場では男性のネクタイと靴も発見された。警察・消防は男性が足を踏み外したとみて、船着場周辺の水中をくまなく探した。捜索作業は1カ月にわたって続いたが、発見には至らなかった。

安東(慶尚北道)=クォン・グァンスン記者

【写真】ミイラ化した男性教頭(当時53)の遺体が収容される様子

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  • ▲水深30メートルの湖底から遺体を発見した元救助隊長のペク・ギュミンさん/慶北水難救助隊提供
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