一方、韓国は「関税戦争」の高波が韓国の政治経済を揺さぶった6月中旬、趙賢東(チョ・ヒョンドン)駐米大使に「2週間以内の帰国」を通告した。趙大使が尹錫悦前大統領の選対出身だったため、ある程度予想されていたことだったが、李在明(イ・ジェミョン)政権発足から1カ月半が経っても後任が決まっていない。尹錫悦政権は発足8日目に駐米大使を任命し、文在寅(ムン・ジェイン)政権は駐米大使の人選を発表するまで3カ月以上を要したが、朴槿恵(パク・クンヘ)政権が任命した安豪栄(アン・ホヨン)大使を一時留任させ、後任が着任するまでの5カ月間、北朝鮮の核・ミサイル危機のような懸案事項を担当させた。これに対し、趙大使は後任人事が決まらないままで12日に帰国の途に就いた。大使を直ちに任命しても、いつアグレマン(相手国の承認)を得られるかは見通せない。文在寅政権下の李秀赫(イ・スヒョク)大使は赴任まで2カ月以上かかった。現在、在米韓国大使館は元カタール大使の李浚鎬(イ・ジュンホ)政務公使が大使代理を務めているが、趙大使の離任後は本国との通商・外交官僚との間の情報共有もまともに行われず、内部はかなり混乱しているとされる。韓米貿易交渉で問題点が浮上したことも少なくなかったという。
各国の在外公館が密集しており、激しい外交戦が繰り広げられるワシントンでは、大使の重要性をどれだけ強調しても余りある。代表的存在が最も実力が評価されるオーストラリアのケビン・ラッド駐米大使だ。 2007年から10年までと、2013年の二度にわたりオーストラリアの首相を務め、最近コロラド州アスペンで開かれた「アスペン安全保障フォーラム(ASF)」では、「MAGA(米国を」再び偉大な国にする)」というキャッチフレーズの国防政策の実質的立案者であるエルブリッジ・コルビー国防次官を「ブリッジ」という愛称で呼び、大使公邸で何度も酒を酌み交わした点を強調した。米国防総省は現在、オーストラリアに原子力潜水艦を供与するため、対中けん制目的の安全保障協議体「オーカス(AUKUS)」の見直しを進めているが、ラッド大使は「我々はブリッジの全てのチームと協力している」「ブリッジが提起した全ての問題を解決していくことを確信している」と述べた。トランプ大統領はオーストラリアに相互関税としては最低の10%の税率を通告したが、オーストラリアは貿易交渉の過程で20年ぶりに米国産牛肉の輸入規制を解除した。
ワシントン=金隠仲(キム・ウンジュン)特派員