「尹錫悦政権は内部分裂で崩壊」 沈之淵教授、『韓国政党政治史』5度目の増補版で学界初の公式評価

『韓国政党政治史』5回目の増補版を出した政治学者の沈之淵名誉教授インタビュー

「選挙の局面で、分裂した政党が統合された政党に敗れる現象は、1948年の大韓民国政府樹立以降1回も例外はありませんでした。今回の第21代大統領選挙も同様でした」

 韓国政治学会長や国会立法調査処長などを歴任した政治学者の沈之淵(シム・ジヨン)慶南大学名誉教授=77歳、写真=が、『韓国政党政治史』(白山書堂刊)の5回目の増補版を出した。2004年に初版を出した後、政権が変わるたびにその前の政権を1章として書き加えてきたからだ。今回は尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権を第15章として収録し、初めて1000ページを超えた。

 同書に注目すべき理由は、幕を下ろした政権に対する学界の初の公式評価にほかならないからだ。「尹錫悦政権は、一言で『内部分裂で崩壊した政権』だと言えます。1948年以来、こんな現象は初めてです」。沈名誉教授は、最短のわずか3年で増補版を出すことになって気持ちは複雑だという。「昨年の総選挙後に、何かおかしいという思いを抱いて資料を集め始めましたが…それでも12・3戒厳令までは全く予想できませんでした」

 沈名誉教授が同書で絶えず主張してきた韓国政党政治の理論は「統合と分裂の政治」だった。簡単に説明すると「集まった側が散らばった側に勝つ」「常に、より劣っている側があまり劣っていない側に負ける」というものだ。当初、公正と連帯を価値に掲げていた尹錫悦政権は、2023年10月の江西区庁長補欠選挙時から民心をきちんと読み取れなくなり、脱線し始めた。

 決定的な分裂は、昨年4月の総選挙直前に起きた。沈名誉教授は「韓東勲(ハン・ドンフン)非常対策委発足時に大統領がその要求を受け入れていれば、弾劾まではいかなかっただろう」と語った。「固執したら総選挙で負けると分からなかったはずがないのに、選挙よりも自分の家族の方が大事と判断したと見るほかない」という。保守系の旧与党側が修正できる最後のチャンスは大統領選挙前の一本化だったが、それすら白紙になった。

 逆に、進歩(革新)系の「共に民主党」は、総選挙の候補公認段階から「李在明(イ・ジェミョン)一極体制」を強固にして、分裂の余地を無くした。「李在明政権は今後の様子を見てみなければならないが、今のように与野党の協治姿勢が見られず極端の道へと進むのであれば、非常に危険」と語った。

 沈名誉教授は「率直に言って、今回だけは自分の『統合と分裂の政治』理論が外れてほしかった」と打ち明けた。またも的中したので学者としてはよいことだが、韓国国民の一人としては不幸なことだと言う。沈名誉教授は「今、韓国政治を脅かしているものの一つは、社会各界を政治の場へと追い立てている比例代表制」とも警告した。また「今後、少なくとも1回は増補版を出したい」という。

兪碩在(ユ・ソクチェ)歴史文化専門記者

<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) Chosunonline.com>
関連フォト
1 / 1

left

  • ▲政治学者の沈之淵・慶南大学名誉教授/写真=趙寅元 (チョ・インウォン)記者

right

あわせて読みたい