韓国与党・共に民主党の鄭清来(チョン・チョンレ)議員が党大会で新代表に選出された。来年8月までの任期まで党を引っ張ることになった鄭清来代表は演説で「内乱はまだ終わっていない。内乱勢力を排除しなければならない」と訴えた。野党・国民の力との関係については「今は与野党の概念ではないと考えている」「謝罪と反省が先になければ彼らと握手はしない」と述べた。就任第一声で野党に対して協力ではなく戦争を宣布したのだ。
鄭清来代表は代表選挙期間中も自らを「党大砲」と呼び「国民の力解散」を訴えた。もちろん選挙戦であれば得票目的でそのような発言もあり得るだろうが、当選と同時に野党第1党を対話の相手として認めず対決を宣言するなど聞いたことがない。鄭清来代表は女性家族部(省に相当)長官に指名されるも後に辞退した姜仙祐(カン・ソンウ)議員に電話を掛け「私がしっかりと擁護する。力を出せ」と激励した。秘書らに対するパワハラ疑惑などで事実上の国民の審判を受けた人物を逆に擁護したのだ。
鄭清来代表は「力強い党代表となり、検察、メディア、司法改革を秋夕(チュソク、旧暦8月15日)前に終わらせたい」とも発言した。検察庁の廃止と並行して公訴庁と重大犯罪捜査庁の新設、放送3法とメディアに対する懲罰的損害賠償、大法官(最高裁判所裁判官)の人数を大幅に増やす法律などをわずか2カ月以内に成立させるという。司法の仕組みやメディアの根幹を変える重大な法案を十分な検討もなく戦争のように短期間で終わらせるというのだ。
鄭清来代表は「李在明(イ・ジェミョン)大統領とは運命共同体」とした上で「一つの体のように動く」とも語っている。民心をありのままに大統領に伝えることが政権与党代表の重要な役割だ。大統領が民心に反したときに指摘し修正すべき人物が「目の色を見るだけで分かる」などと大統領との関係ばかりを強調するようでは困る。過去にも国民目線よりも大統領をより意識した党運営は例外なく政権運営に失敗してきた。
今は経済と安全保障が危機的状況にある。経済成長率見通しが0%台に下落する中で米国の関税爆弾が投下された。米中の覇権争いが続く中、在韓米軍の役割見直しや防衛費増額なども議論されている。国内外の事情は急を要しており、野党との対立だけに没頭できるような状況ではない。
国政に責任を持つ政権与党の代表であれば、政府と共に現状に対応しながら国民を守り抜く責務があり、また野党とも緊密に協議しつつ国の課題を解決していかねばならない。所属政党内部と過激な支持者の顔色ばかりをうかがうのではなく、国民全体と国益を念頭に置いた懐の大きい政治を期待したい。