韓国国内に潜入・潜伏していたパキスタンの過激派テロ組織「ラシュカレ・タイバ」(LeT)のメンバーが警察に捕まった。この団体は国連指定のテログループで、韓国国内でメンバーが逮捕されたのは初めて。
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京畿南部警察庁安保捜査課は8日、パキスタン国籍の40代のA容疑者をテロ防止法および出入国管理法違反等の容疑で身柄を拘束し、水原地検に送致したと発表した。警察は最近、国家情報院(韓国の情報機関)から関連情報を受け取って捜査に着手し、今月2日にソウル市竜山区梨泰院のスーパーマーケットで働いていたA容疑者を緊急逮捕した。
警察によると、A容疑者は2020年に故郷のパキスタン・ナロワールでLeTに加入した後、機関銃・迫撃砲・RPG(ロケット推進りゅう弾)など火器の使用法や潜入の訓練を受け、正式メンバーとして活動した容疑が持たれている。LeTは1980年代中盤に創設されたイスラム過激派テロ組織で、パキスタン情報機関(軍統合情報局・ISI)の支援を受けていたといわれている。05年に国連からテログループに指定された。08年11月のムンバイ連続テロ事件を主導して166人を殺害し、今年4月にインド領カシミールで起きた銃撃テロ事件の黒幕とも目されている。
A容疑者は23年9月にパキスタン駐在韓国領事館に「事業のために韓国企業を訪問する予定」と称して虚偽の申請書を提出し、短期就業用ビザ(C4)を取ることに成功した。警察による調べの結果、申請書に書いた会社は実際には存在しないことが判明した。同年12月に韓国入りしたA容疑者は、ソウルの梨泰院などで居住していたことが分かった。24年1月にビザの有効期限が切れたが、不法滞在者として梨泰院一帯にとどまっていた。
警察の調べに対しA容疑者は「韓国にはカネを稼ぎに来ただけ」だとし、「その組織を知ってはいるが、所属はしていない」と主張したと伝えられている。しかし入国後ただの一度も就業した記録がなく、検挙当時もスーパーで短期アルバイト中だったことから、容疑者がきちんと経済活動をしようとして韓国に滞在したとは考え難い―というのが警察の判断だ。警察は「容疑者が韓国国内で直接テロなどを起こすことはなかったが、16年に施行されたテロ防止法に基づき、テロ団体のメンバーとして活動した前歴そのものを犯罪行為とみて令状の発布を受けた」と説明した。
警察は、国家情報院と協調し、容疑者が韓国国内でテロ資金を募金・送金した形跡があるかどうか、別のメンバーと接触したかどうかなどを調べる方針だ。
水原=キム・ヒョンス記者