尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の配偶者である金建希(キム・ゴンヒ)夫人が12日の夜、勾留された。現職・元職の大統領夫人としては初の勾留事例であり、元職の大統領夫妻がそろって勾留されるのも韓国の憲政史上初めてのことだ。ソウル中央地裁の鄭宰旭(チョン・ジェウク)令状専担部長判事はこの日、「証拠隠滅の恐れがある」として、閔中基(ミン・ジュンギ)特別検察官(特検)チームが請求した金夫人の勾留状を発布した。金夫人を巡っては、輸入車ディーラー「ドイツ・モーターズ」の株価操作に関与した疑惑や、政治ブローカーのミョン・テギュン氏と共に尹政権で与党だった「国民の力」の公認候補選びに不正に介入した疑惑、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の元幹部が「乾津法師」と呼ばれるシャーマンを通じて金夫人にダイヤモンドのネックレスや高級バッグを渡し、教団のカンボジア事業などで便宜を図るよう依頼した疑惑などがある。
【適示された容疑と別件】瑞熙建設から受け取った「ヴァンクリーフ&アーペル」ネックレスを着用した金建希夫人
特検は、勾留に先立って開かれた令状審査で、2022年6月に金夫人がNATO(北大西洋条約機構)歴訪時に着用した6000万ウォン台(現在のレートで約640万円。以下同じ)の「ヴァンクリーフ&アーペル」の首飾りの実物を提出した。弁論の最後に決定的な証拠を提示したのだ。これと共に特検は、瑞熙建設の李鳳官(イ・ボングァン)会長が「2022年3月に当時の尹錫悦大統領の当選祝いとして金夫人に首飾りを届けた」という内容の自首書を提出し、勾留捜査の必要性を強調した。
先に特検は7月25日、金夫人の実兄の義母宅を家宅捜索してこの首飾りと同じデザインの模造品を確保した。その後、特検の取り調べで金夫人は、この首飾りについて「2010年に香港で母親へのギフトとして購入した模造品を借りて着用した」と供述した。特検は12日の令状審査で、この模造品の首飾りも提示し、金夫人がアリバイ操作を行った可能性にまで言及したという。特検関係者は「金夫人など関係者の捜査妨害および証拠隠滅の疑いについて究明が必要」と語った。
予想外の証拠の提示に、金夫人と弁護人団は非常に当惑し、すぐさま反論ができなかったという。ただし鄭部長判事は特検側に、勾留状に適示された容疑と別件ではないかと指摘しつつも、金夫人には「首飾りを受け取ったのは事実か」と尋ね、これに対し金夫人は「受け取っていない」と答えたことが分かった。金夫人は最終陳述で「結婚前の問題まで今も取り上げられ続けていて悔しい」と発言した。これは、結婚前のことだった株価操作疑惑や私生活に関するうわさなどを指していると解されている。
一方で特検は、レンタカー業者のIMSモビリティーを巡る特別待遇的な184億ウォン(約19億6000万円)投資疑惑の当事者と目される金夫人の側近、キム・イェソン氏を、同日午後に仁川国際空港で逮捕した。
イ・ミンジュン記者