「法律施行3カ月以内にKBS理事交代」 共に民主党が忌み嫌う新軍部のやり方と全く同じだった

 韓国公共放送局KBSの支配構造を「大手術」する新たな放送法公布を目前に控え、今もこの法律を巡る論争が続いている。とりわけ同法施行後3カ月以内に理事の交代を義務付けた同法付則を巡っては、法律に詳しい専門家などから「1980年に新軍部が制定した国家保衛立法会議法の付則とよく似ている」との指摘もある。国家保衛立法会議法は1989年に憲法裁判所で違憲判決を受けたが、今回の放送法付則も同じく違憲論争が起こる可能性が高いという。

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 放送法付則第2条はKBS理事について「法律施行3カ月以内に新たな理事が任命されるまで職務を遂行する」と定めている。新たな放送法は、現在11人のKBS理事を15人に増やし、役員を含むKBS社員、放送学会、弁護士団体などにその推薦権を拡大するとしている。同法施行から3カ月となる11月までに新たな理事が任命されれば、それまでの理事は任期が残っていても強制的に交代となる。つまり徐基錫(ソ・ギソク)理事長をはじめとするKBS理事11人のうち7人は任期(3年)を満たす前に解任となる。

 法律に詳しい専門家はこの放送法付則について「1980年に軍部が臨時立法機関の『国家保衛立法会議』を設置するため制定した国家保衛法付則とよく似ている」との指摘が相次いでいる。当時軍部は国会を国家保衛立法会議に代替する法律を制定したが、その付則第4項には「国会所属の公務員は法律により後任が任命されるまでその職を維持する」との内容があった。この法律に基づき当時の国会職員は解任されたが、この付則は1989年に憲法裁判所で違憲との判決を受けた。「公務員の身分保証」を定めた憲法の規定に法律を遡求(そきゅう)させて違反したためだ。

 憲法学者で中央大学法学専門大学院のイ・インホ教授は「放送法付則は新軍部付則第4項と同じく将来的に憲法裁判所で違憲判決が下される可能性が高い」と指摘する。イ・インホ教授は「KBS理事は公営放送の運営に責任を持つため、新放送法が彼らの法定任期を短縮した場合、それは憲法が保証する『放送の自由』の侵害に当たると考えるのが妥当だ」と説明した。

 憲法裁判所で憲法研究官を務めた建国大学法学専門大学院のファン・ドス教授も「法律で任期が保証されている理事を解任する今回の放送法付則は、過去に憲法裁判官の全員一致で違憲とされた新軍部付則に匹敵する条項だ」「遡求立法禁止の原則と信頼保護原則から見て、放送法付則は違憲と考えるのが妥当だ」との見方を示した。元憲法裁判官の別の専門家は「全斗煥(チョン・ドゥファン)政権による国家保衛委員会を誰よりも嫌う共に民主党が彼らと全く同じ行動を取っている」と批判した。

 これらの批判に対して共に民主党は「後から制定された法律が先に制定された法律に優先する効力を持つ、いわゆる新法優先の原則が適用される」と反論している。与党と全国言論労組韓国放送本部は「新たな放送法により、理事はもちろん、国民推薦制など新放送法の規定を適用して社長も交代すべきだ」と主張している。KBSの朴樟釩(パク・チャンボム)社長が就任したのは2024年12月で任期は3年だ。

 法律の専門家は放送法付則第2条だけでなく第3条も問題としている。付則第3条はYTNや聯合ニュースTVなど報道専門チャンネルの代表や報道責任者を3カ月以内に交代するよう定めている。YTNは有進グループが所有する民間放送なので、法律による企業の人事や運営への介入は商法などに反するためだ。ただしYTNのキム・ペク社長は放送法が成立する見通しとなった今年7月、3年の任期を1年残して辞任した。

ヤン・ジヘ記者、イ・ヘイン記者

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