南シナ海上でフィリピン巡視船を挟み撃ちのはずが…中国艦船同士が衝突

■中国駆逐艦、フィリピン艦の23倍の大きさ

 スカボロー礁一帯は中国とフィリピンが10年以上領有権紛争が起きている場所です。 フィリピンの海岸から西に230キロ離れていて、中国南部の海南島からは850キロの距離にあります。フィリピンは国際法に基づき、自国の排他的経済水域(EEZ)と見なしていますが、中国は自国の領土だと主張し、2012年から実効支配しています。国際司法裁判所は2016年にフィリピンが起こした訴訟で「中国の領有権主張には根拠がない」との判決を下しましたが、中国はこの判決を無視しています。今年6月にも両国の警備艇が衝突する事件がありました。

 事故を起こした桂林は中国南部戦区所属のミサイル駆逐艦で、2021年に就役した最新鋭の艦船です。排水量で比較すると、韓国の世宗大王級駆逐艦とほぼ同じ全長159メートル、幅18.4メートルの大型艦船です。中国海警局の警備艦「南域」も全長88.9メートルの大型艦です。元は中国海軍がミサイル護衛艦として使用していたが、海警局に引き渡されました。

 一方、フィリピンの警備艦は小型の多目的巡視船として2017年に就役しました。桂林と比べると23分の1の大きさにすぎません。

■中国は報道規制、フィリピンは勲章授与

 中国は当惑しているようです。フィリピンが公開した映像には、中国の警備艦が疾走し、フィリピン艦を脅かす様子が映っていました。ここ数年間、中国の戦闘機が公海上で米国、オーストラリア、カナダの偵察機、哨戒機などに接近して飛行しながら威嚇していたことを連想させる場面でした。自国の艦船同士が衝突したことで、海軍と海警局で歩調が合っていない様子も露見しました。

 中国外務省と中国海警局は今回の事件に関連して、「合法的な法執行を行った」としていますが、自国艦船による衝突については一言も取り上げませんでした。官営メディア環球時報の編集長を務めた胡錫進氏も8月11日夜、微博に艦船衝突の情報を掲載し、「フィリピンに借りを返さなければならない」と書きましたが、直ちに削除しました。中華圏では「北戴河で会議を開いている中国の最高指導部にもかなりのショックだっただろう」との声が聞かれます。

 一方、フィリピンはお祭りムードです。8月12日にマニラに帰港したスルアンの船長と船員全員に勲章を授与したそうです。

 フィリピンと相互防衛条約を結んでいる米国は8月13日、イージス駆逐艦「ヒギンズ」(同8700トン)と沿海域戦闘艦「シンシナティ」(同3100トン)をスカボロー礁付近の海域に展開しました。中国による万一の報復に備え、抑止に入ったとみられます。

崔有植(チェ・ユシク)記者

【写真】中国艦船同士が衝突する様子

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